夏は着物を着る人にとっては過酷な季節です。裏地をつけない単衣や、絽、紗といった薄手の透けるような素材の着物地が使われますが、それでも暑さを感じます。
夏はTシャツに短パンだという人は、いくら夏の生地でも着物を着るなんていうことは考えられないことでしょう。絹という素材は、やはり暑いのです。
そんな時に現れたのが「上布」です。上布は苧麻という麻の中でも特に細い糸で織られた薄い布を加工した高級な麻布のことを言います。
上布は夏の着物として有名なもので、産地もいくつかあります。着物好きの人にとっては、上布の着物は憧れのもので、高価でなかなか買えないとも言われています。
そんな上布の特徴や産地、歴史、起源などから上布がどれほど高級なものなのか、値打ちがあるものなのかを知ることができたら夏の着物についても興味がわくかもしれません。
夏は暑いから着物は着ない、着たくないという人が多いと思いますが、上布のことを知れば夏に上布の着物を着てみたいと思うかもしれません。
ここでは、上布の種類や特徴、歴史などをまとめ、最後に上布の着物を買取してもらうならどうすれば良いかをまとめていきます。
目次
上布とは?
上布というのは、上等の布という意味です。綿や絹が使われる前は、着物の素材は葛や楮、麻でした。中でも一般的だったのは麻です。麻の中でさらに高級なものとされたのが上布です。
上布は、上質の細い糸(苧麻)で織った薄手の織物のことを言います。上質の麻織物は上布であると言って良いでしょう。
上布と呼ばれる織物には、八重山上布、宮古上布、会津上布、越後上布、能登上布、近江上布などがあり、有名です。
上布の起源は古く、正倉院の御物にも納められています。越後上布は千年、能登上布はさらに古く第十代天皇である崇神天皇の皇女が能登に滞在した時、その土地の人に麻の上布を作ることを教えたことから始まったのではないかと言われています。
上布は全部で6種類ある
上布にはいくつか種類があって、代表的なものとして
- 会津上布
- 越後上布
- 近江上布
- 能登上布
- 宮古上布
- 八重山上布
この他にも上布と付く織物はあるのですが、有名なものはここに挙げた6種類になります。
上布それぞれの特徴や意味、歴史について何も知らないという人も多いでしょうから、簡単にまとめておきます。この機会に上布のことを知っておきましょう。
「越後上布」と「小千谷縮」
越後上布(小千谷縮)は新潟県小千谷市が産地です。重要無形文化財に指定されており、越後縮とも言われます。苧麻をてづみした糸を使い、伝統的な技法で織られています。
越後上布(小千谷縮)は、大変貴重で高尚であると言われる手作業での技術を使って織られているものです。通気性が良く軽いのが特徴です。
上布はさらっとした風合いで、縮はシャリ感が魅力とされています。夏の蒸し暑い時に最適な最高級着尺地となっています。
越後上布(小千谷縮)は、ユネスコの無形文化遺産に登録されました。日本の染織技術では第一号になります。
越後上布の歴史は古いと言われており、千数百年にも及びます。奈良の正倉院に越後の麻布という記載があります。
新潟県の魚沼では、湿度の高い雪国の自然環境や風土が麻織物の生産に適していることがわかりました。そのため古来より農閑期の仕事として受け継がれてきたのです。
民族衣裳文化普及協会「越後上布[小千谷縮](えちごじょうふ)」によると越後上布は、朝廷や将軍家への献上品として贈られたという記録もあり、越後上布は高い評価を得ていたのです。
江戸時代には幕府御用となり、最盛期には年間20万反もの生産になったと言われており、魚沼の一大産業となっていました。
明治時代以降になると、近代化と共に工業化が進み、昔からの方法で生産される製品はごくわずかの量になってしまいます。
貴重な技術を守るために技術保存協会が設立され、昭和30年には国の重要無形文化財総合指定第一号を得ることができたのです。
現在も越後上布、小千谷縮の技術保存協会では昭和42年から現在まで伝承者養成事業を行っています。
越後上布と小千谷縮との違いは何かあるのでしょうか。越後上布、小千谷縮のどちらも平織りですが、小千谷縮は横糸に強いひねりをかけて湯もみをすると布が縮み、表面にしぼと言われる凹凸ができます。これが越後上布と小千谷縮の違いになります。
小千谷縮は江戸時代の初期に、越後上布に明石縮の横糸に強いひねりをかける技法を取り入れ、しぼのある麻織を織り出したのが始まりだと言われています。
国の重要無形文化財&ユネスコ世界無形文化遺産にも登録
越後上布、小千谷縮は国の重要無形文化財、ユネスコ世界無形文化遺産に登録されています。国の重要無形文化財総合指定第一号に登録されたのは、昭和30年5月12日でした。
また、平成21年9月30日にはユネスコ世界無形文化遺産に登録されました。日本の染織技術としては初めてとなります。
重要無形文化財の技術指定を受けるための条件が指定されています。使う糸は苧麻を手積みしたものであることや、絣模様の付け方、織り方、皺取りの方法、晒し方の5つです。
これらの要件で作られる越後上布、小千谷縮は重要無形文化財と指定されています。ユネスコ無形文化遺産に登録されるのにも条件があります。その条件に当てはまったので登録されたのです。
重要無形文化財、ユネスコ世界無形文化遺産に登録されたものなので、価値が上がると考えられます。小千谷縮、越後上布の着物はそれなりの価値があると言えるでしょう。
重要無形文化財&ユネスコ世界無形文化遺産とは?
越後上布、小千谷縮が国の重要無形文化財、ユネスコ世界無形文化遺産に登録されていますが、重要無形文化財、ユネスコ世界無形文化遺産とは何なのでしょう。
無形文化財というのは工芸技術や演劇、音楽その他で私たちの国にとって価値が高いものを言います。重要無形文化財は無形文化財のなかでも重要なものを指定したものです。重要無形文化財に指定されるには、要件があります。
ユネスコ世界無形文化遺産とは、人から人へ受け継がれていく伝統工芸や芸能、祭礼などを対象にして登録されるものです。
世界遺産が建物といった形が有る文化財の保護、継承を目的にしているのに対し、無形文化財は民族文化財といった形が無いものを対象としています。
ユネスコというのは国連の機関で、教育や科学、文化を世界レベルで守ろうとしているところです。
近江上布について
近江上布の産地は滋賀県愛知郡愛知川町、秦荘町です。近江上布は京都の職人が鎌倉時代にここに移り住み、技術を伝えたことから始まりました。
江戸時代に入って彦根藩の保護により農家の人が副業で蚊帳地、着尺地などを盛んに生産して近江商人が全国に売り歩き、有名になったのです。
近江上布の特徴は、縮仕上げの細かい風合い、独特の絣模様があり、とても清涼感のある麻織物です。きれいな琵琶湖の水で麻をさらし、平織りしていきます。
民族衣裳文化普及協会「近江上布」によると、ずっと手紡ぎ糸が使われていましたが、明治時代に入ってからは亜麻紡績糸に、そして明治の末頃にはラミー糸へと変化しており、現在に至ります。
近江上布は昭和52年に伝統的工芸品に指定を受けました。指定を受けた技法は、生平で使う糸は苧麻糸か手績ぎ大麻糸であること、染め方は先染め、平織り、絣糸の染色まで決められています。(櫛押捺染または型紙捺染)
現在は湖東地区で、着物やシーツ、座布団、布団向けの縮、服地向け上布が生産されています。ラミー糸を用いるようになってからは、上布ほど高価ではないけれど、本物の上布に近い風合いの麻織ができます。
能登上布について
能登上布は石川県鹿島郡鹿西町、羽咋市が産地となっています。能登縮、安部屋縮とも呼ばれています。
能登地方では苧麻の栽培が平安時代から行われていて、苧麻は江戸時代の中頃まで近江上布の原料としていました。しかし近江から職人を招いて技法を取り入れたことから、能登上布の生産を始めたのです。
昭和の初めには麻織物の生産が全国一になり、昭和35年には石川県無形文化財と指定されています。
能登上布の特徴は、海晒しの麻織物として有名です。織りあげた布の糊を落とすのに海水に一昼夜浸けて乾かします。この作業を4、5回繰り返し、欅製の臼に少しずつ(数反ずつ)入れて桐の杵で搗きます。
そして晒し桶でお湯をかけながら足で踏み、4時間から5時間寝かせてから海水に広げ、布を膨らませながら晒し真水で濯いだあと海岸の岩場で天日に晒すのです。
能登上布の特徴は、細い麻糸を使った手織りの織物で、さらっとした肌触り、清涼感があります。絣の染色は櫛押捺染、丸型捺染、型紙捺染、板締めの4種類の方法があります。能登上布は夏の高級着尺地として使われます。
民族衣裳文化普及協会「能登上布」によると大和朝廷にも献上されていたと言われる能登上布は二千年にも及ぶ長い歴史を持つ麻織物です。平上布と縮上布があり、白絣、本絣、紺絣、緯総絣などが作られ、男物、女物別によって色や絣技法が使い分けられています。
宮古上布について
沖縄県平良市が産地となっている宮古上布は、夏の高級着尺地として使われます。苧麻でできた手紡ぎ糸で織り、沖縄の泥藍で染め、手織り、砧打ちした大変上質の麻織物です。
極細の糸で織られているので、滑らかさと光沢があります。とても細かい絣模様が特徴です。このような特徴があるため、一反作るのに二か月もの時間がかかる織物です。東の越後上布、西の宮古上布と言われるほどの高級品です。
李朝実録には1479年に宮古島で麻布が織られていたという記述がありますが、精巧な上布が織られるようになったのは1583年と言われています。宮古上布は王朝御用達となったため、さらに色上布も作られるようになったのです。
宮古上布は、薩摩藩の侵略がきっかけで全国に広まりました。薩摩藩が住民に税金をかけ、それを支払う手段として宮古上布を指定したのです。
税金として納められた宮古上布は薩摩上布として江戸に送られ、全国に広まりました。
民族衣裳文化普及協会「宮古上布」によると第二次世界大戦によって宮古上布は生産を一旦中断しましたが、昭和23年には再び始まりました。そして、手績み、手織り、正藍染を条件とする重要無形文化財に指定されました。
八重山上布について
八重山上布は沖縄県八重山郡竹富町、石垣市が産地です。手績みの麻糸を絣柄に染め、独特の機織り機で織った織物です。八重山上布も海晒しで仕上げるのが特徴となっています。
藍染の白絣や茶染の白絣、また赤縞上布や紺縞細上布などがあり、細い糸から作られさらに軽いものであるほど高価だと言われています。
八重山上布の起源ははっきりとわかっていませんが、1637年に開始された人頭税の貢納布に八重山上布があるのでそれ以前から織られていたのではと言われています。
八重山上布の中の茶絣は、薩摩藩を通して錆絣、薩摩白絣の名前で日本国内に知られていました。しかし、明治36年に人頭税の廃止によって八重山上布は発展しましたが、第二次世界大戦で衰退してしまいました。
そして沖縄が本土に復帰してから、島の若い人たちが八重山上布の伝統技術を守っていくための活発な活動を現在も続けています。
民族衣裳文化普及協会「宮古上布」によると八重山上布は平成元年4月に伝統工芸品の指定されました。その技法が定められており、使う糸は苧麻糸苧績糸、染色は手括りか手摺りこみによる先染、また緯糸の打ち込みは平織りであることとされています。
近江上布・宮古上布・八重山上布は国の工芸品として指定
上布の中で、近江上布、宮古上布、八重山上布は伝統的工芸品に指定されています。伝統的工芸品には、法律上で要件が決まっており、それに合ったものが指定されます。
伝統的工芸品である要件は、主に日常生活で使用されるものであることや製造過程の重要な部分が手作業であるということ、また伝統的な技術や技法を用いて造られていること、さらに原材料は伝統的に使われてきたものであること、産地は一定の地域で形作られたことです。
近江上布は昭和52年3月30日に、宮古上布は昭和50年2月17日、八重山上布は平成元年4月11日に伝統的工芸品に指定されました。
工芸品の特徴となっている原材料や技術、技法の主要な部分がずっと継承されていくように保護していかなくてはなりません。
上布の買取の正しい業者選び
街にはリサイクルショップがたくさんでき、不用品をそこで処分する人が増えました。しかし着物の場合はリサイクルショップではなく、着物の買取を専門的に行っているところに査定してもらい、買取してもらうのが一番です。
特に上布という高級な着物を持っているのなら、着物買取専門店で査定してもらいましょう。専門店なら着物の値打ちがわかる人がいますので、きちんと査定してもらえます。
リサイクルショップでは着物の査定ができる人はいないと思ってよいでしょう。ですからいくら高価な上布だと言っても全く理解されず、古着と同じ扱いをされる可能性があります。
着物の買取は、着物の買取ができるお店に依頼すること、着物買取の実績があるところに依頼するようにしましょう。
近所のリサイクルショップやネットオークションで高額査定は無理
もう着ない着物があるのだけれど、近所にリサイクルショップがあるからそこへ持って行こうとか、ネットオークションで売ってしまおうと考えている人はちょっと待ってください。
リサイクルショップでは着物の価値がわかってもらえないので、いくら高価な上布の着物であっても高額買取は無理です。ネットオークションでも、着物に詳しい人が入札してくれるとは限りませんので、安い値段でしか取引できない可能性があります。
きちんと査定してもらい、着物に見合った額の買取金額を提示してくれるところに依頼しないと損をすることになります。
着物の買取に力を入れている、得意であるという買取業者に依頼すると、上布で保管状態が良いものだとかなりの高額が期待できます。
上布の多くは高額査定の条件の一つ「経済産業省指定伝統的工芸品」
着物は着物買取業者に査定、買取してもらうことをお勧めします。きちんとした着物の価値がわかる人に査定してもらわないと、損をすることになります。
着物の中でも上布は高級なものとされていますが、中でも国の指定を受けた伝統的工芸品や重要無形文化財だとさらに高価買取が期待できます。
買取相場は
- 宮古上布:10万円~15万円
- 近江上布:5万円~10万円
- 越後上布:10万円~15万円
となっています。
通常の上布の買取相場は3万円から5万円くらいからとされていますので、そのことから見ても高価買取です。
伝統的工芸品や重要無形文化財であることが証明できるもの(証紙など)はきちんと保管しておき、査定の時に一緒に出すようにしましょう。
質の低い業者だと高額な着物だとわかっていながら安く買い取られる可能性も・・・
着物の買取は、着物買取専門店へ依頼するのが良いのですが、その業者の中には悪徳と言われるところもあります。
良い着物なので高価で買取できるとわかっているのに、それよりもかなり低い価格で買取し、高い値段をつけて中古着物として売るのです。
このような業者に騙されないためには、査定を依頼する側も前もって着物の買取相場価格を調べておき、知っておくと良いでしょう。
そうすると低い金額を提示された時に説明を求められますし、相手にも着物のことを調べていることがわかるので、正当な買取額を提示してくるようになります。
相手に任せきりにするのではなく、できることはしておいた方が高価買取のポイントになります。
必ず信頼できる買取業者に依頼する
着物を何枚か持っているが、もう何年も着ていないから処分したいと考えている人は、着物を買取してもらいましょう。最近は不用品を買取しますというようなリサイクルショップが増え、家で出た不用品をいくらかで買取してもらえるのです。
着物はどれも高価なものですから、そのままゴミにするのなんてもったいないですから、いくらかで買取してもらえるのなら、その方が良いです。着物の買取を専門に行っているお店もありますので、そこに依頼してみましょう。
着物には高級なものがたくさんありますが、中でも上布は夏の高級着物として有名です。上布は最高級の麻布として知られ、通気性が良く涼しいので夏の着物に使われます。
上布の産地はいくつかあるのですが、中でも日本三大上布と言われる越後上布、近江上布、宮古上布は買取額も高いと言われています。
こういった着物の価値がわかる買取業者に依頼しないと高額買取は期待できません。
やはり大手で安心感がある「スピード買取.jp(※現在の名前はバイセル)」は、テレビCMをしていることもあり、安心して依頼できます。査定から買取までスピーディーで、高値で買取してくれると評判の買取業者です。
依頼するとすぐに行動してくれるので、あっという間に不要になった着物を引き取ってもらえます。
まとめ
上布は上質な夏の着物として有名です。中でも越後上布、近江上布、宮古上布、八重山上布は伝統的工芸品に指定されており、越後上布は重要無形文化財にも指定されているものです。
これらの着物を持っているけれど、もう着ることがないという場合は着物の買取店へ買い取ってもらうことをおすすめします。
近所のリサイクルショップでも買い取ってもらえますが、上布の価値がわかる人が査定するわけではないので、タダ同然の金額を提示されることがあります。
こういったことを防ぐためにも、着物の買取を得意としている買取店や、着物の買取を専門にしているところへ依頼することが大切です。ただし、業者の中には質の良くないところもあるので、口コミやホームページの情報などを参考にして選ぶようにしましょう。
信頼できるお店なら査定は無料で行っているところがほとんどです。いくつかのお店に査定をしてもらい、査定額を比較したりサービス内容を比較してみて業者選びをすると良いでしょう。査定料や出張料などといったお金を要求するところはあまりおすすめできません。
大手で信頼のできる、スピード買取.jpなら安心して上布の買取を依頼できるでしょう。