浴衣を一人で着られるようになったらとても嬉しいものです。一見、浴衣の着付けは難しい印象を受けますが、実は初心者でもコツやポイントをしっかりと押さえれば着付けることは十分できます。
今はネットもかなり普及して、動画などが配信されています。文面だけではわかりにくいことであっても動画を見ればとれもわかりやすく「なるほど」と理解できるので、自分で浴衣の着付けができるようになることも多い傾向にあります。
もちろん、着付け教室などに通って講師の方に直接教わるのもいい方法です。今は簡単に着ることが出来る浴衣も多いのですが、浴衣は日本ならではのお召し物です。ぜひマスターしてみましょう。
目次
浴衣の着付けに必要なアイテム9選
浴衣を着る前に、まずどういったアイテムを用意すればいいのでしょうか。
もちろん浴衣は必須アイテムです。
- 帯
- 下駄
- 浴衣スリップ
- 前板
- 伊達締め
- コーリングベルト
- 腰紐
- 籠バッグ
この9アイテムがあればとりあえず大丈夫です。
他にも髪飾りなど必要に応じて用意して頂ければと思いますが、まずは上の9アイテムを揃えておきましょう。セットになっていることもありますので、よく確認しながら用意していきましょう。
浴衣
浴衣と一口にいっても、いろいろな柄や色、染め方があります。
綿紅梅といって、薄手の生地に太い糸を使って細い格子状にデコボコを出しているのが特徴です。透け感が出るので涼しげな印象を受けます。蒸し暑いような時におススメの生地です。
そして綿麻で作られている浴衣もあります。綿に麻が加わることで生地がシャキッとして形が崩れにくくなるという特徴を持っています。
綿絽という生地は、風通しがよく涼しく着られる生地です。縦から横の方向に隙間ができるように織られているからです。
縮と呼ばれる浴衣は、素材が綿や麻、絹などが使われ着ていると蒸し暑くなってしまう浴衣でも涼しく着ることができます。
そのほかにも、綿紬、綿縮といった種類の浴衣もあります。
帯
浴衣の帯にもいくつか種類があります。
もっとも一般的でポピュラーなのが半幅帯です。ポリエステル、麻、正絹などで作られていて、いろいろな結び方ができるので一つ持っているととても重宝します。
結び方ひとつで浴衣の雰囲気を変えることができたり、近年はリバーシブルタイプなども登場しています。
着物の帯と浴衣の帯は幅が違います。浴衣の帯は着物の帯に比べて細めで柔らかく扱いやすい、また結びやすいのが特徴です。
無地もあれば、柄や色がカラフルなものなどもあり、選び方ひとつでいろいろな形に変えることができます。自分で巻くことができるタイプの帯なので、アレンジが自由にきくというのも半幅帯のメリットです。
また最近は、すでに形が出来上がった差し込むだけの帯も利用される方が増えてきています。
下駄
浴衣といったら下駄がないとせっかくの浴衣が台なしです。下駄にもいくつか種類があって、底裏が2枚歯になっている駒下駄は代表的な下駄で、下駄の中では一番歩きやすいと言われています。
また右近下駄という下駄もあります。これは底裏にスポンジが使われてい裏地の面積が比較的広いのでサンダルと同じような感覚で履くことができます。
見栄えでいったら千両下駄がおススメですが、こちらは役者さんなどが好んで履いている下駄で、履きやすさでいくとやや一般人には履きにくいかもしれません。
結婚式や成人式などで用いられることが多い小町下駄は重量があるので浴衣に使うことは少ない傾向にありますが、形が丸みを帯びているので女性らしい下駄となっています。
浴衣スリップ
浴衣は用意したものの、下には何を着るかというと浴衣スリップです。浴衣スリップは浴衣のためのインナーで透けるのを防止してくれる特徴があるほかにも、滑りを良くしてくれるので、浴衣を着る際には1枚用意しておくと便利です。
ただ、生地によっては通気性が悪いものもあるので、浴衣スリップは麻のような通気性の良い生地を選びましょう。
しかしながら、河川敷などは風があって夏場でも涼しく感じることも多いですから、綿などの生地の浴衣スリップも1枚あるといいかもしれません。
浴衣が出回る時期に一緒に販売されることが多く、1000円程度で購入できるものもあります。意外に浴衣は透けてしまうことが多いので、浴衣スリップを用意して透け防止として活用していきましょう。
前板(帯の結びで使用)
浴衣は帯を締めても、帯がデコボコしてしまうと格好がつきません。帯の1巻目、2巻目の間に前板を挟むことで帯がすっきりとして、見た目がとても映えるようになります。
前板といっても浴衣は夏に着るものなので、熱がこもりやすいですからメッシュ状の夏用の前板を用意しましょう。
前板にも種類があって帯の結びが完成した後に差し込むベルトがないタイプ、前板を固定したあと帯を結ぶベルトがあるタイプの2種類があります。
もちろん前板がなくても浴衣が着れないわけではないものの、あった方が浴衣映えするのは当然のこと、浴衣の形が崩れにくくなったり帯のズレを予防するのにも役立ちますので、ぜひ前板は用意しておくことをおススメします。
伊達締め
浴衣は伊達締めがなくても着ることはありますが、できる限り伊達締めは用意しましょう。伊達締めはおはしょりを安定させる目的があり、ゆるみやすい衿の形をキープすることができるアイテムです。
浴衣姿をきれいに見せてくれるというメリットもありますので、浴衣の素材に合わせ種類などを選んでいくといいでしょう。
結ぶところが柔らかくなっていて胸に当たる部分は張っているもの、結び目がほどけにくいものを選ぶのがポイントです。
よく使われているのが布製の博多織と、近年はゴム製の伊達締めも登場してきていますので、扱いやすい方を使えば問題はありません。浴衣を着るのが初めて、慣れていない方はゴム製の伊達締めの方が扱いやすいかもしれません。
コーリングベルト
コーリングベルトなどという言葉を聞いたことがない方の方が、初心者には多いかもしれませんが、コーリングベルトは腰紐をしっかりと結んだあとにでてくるアイテムです。
浴衣のベルトと称されています。コーリングベルトをせず腰紐だけでも同じ効果はあるものの、腰紐の上からさらにコーリングベルトをすることで浴衣のズレの防止に役立てることができます。
浴衣に着ることに慣れればコーリングベルト無しでも大丈夫かもしれませんが、まだ浴衣の着付けに慣れていない方はコーリングベルトがあると帯も締めやすくなるのでおススメです。
どうしても浴衣は歩いている最中にはだけたり衿がずれてきてしまいます。気になってしまうのはもったいないので、ぜひコーリングベルトを用意しておきましょう。
腰紐
浴衣を着るには腰紐がないとお話しになりません。腰紐なしでは浴衣がはだけてしまってだらしなくなりますので、浴衣を着るときの必須アイテムの一つともいえます。たかだか紐ですが、かなり重要な役割を担っています。
腰紐を何本も持っている必要はありませんので、最低1本は必ず用意しましょう。もし腰紐がない状態で浴衣を着るときは、ストッキングなどでも代用できますし、最悪の場合、梱包用のひもを用いても構いません。
それくらい腰紐というのは浴衣を着る時には必要になるアイテムということでもあるのです。浴衣売場に腰紐は必ずといっていいほど用意されていますし、浴衣によっては腰紐がセットになっているタイプもあります。
籠バッグ
浴衣を着ていると、いつも持っているバッグではあまり似合わないこともあります。浴衣にピッタリなのが籠バッグで、涼し気ですし荷物もしっかりと入るのでぜひ籠バッグも用意しておきましょう。
色や柄など種類はかなり豊富ですし、浴衣のときのみならず、夏場は籠バッグを利用できる最適な時期でもありますので、一つあるといろいろな場面で利用できるのでおススメです。
色鮮やかなもの、どんな浴衣にもあわせられるシックで落ち着いたもの、場所やシーンを選ばず活用できる形のものなど、好みに合わせて購入するといいかもしれません。
基本的に浴衣にはどんな籠バッグでも問題はありませんが、実際に柄や色などが合うかどうかも大切になってくるので浴衣を購入するときに合わせながら購入するのがいいでしょう。
一人で浴衣を簡単に着る方法
浴衣を着るのに必要な最低限のアイテムがそろったら、いよいよ一人で浴衣を着ることに挑戦することができます。浴衣を着るのが難しい、着たことがない方はそう思うかもしれません。
ですが、一人で浴衣を着るのは実はアイテムが揃っていれば比較的簡単に着ることができます。着たことがないから難しく感じるだけで、もちろん完璧に着るということはできなかったとしても十分形になります。
浴衣が着れるかどうかそれは「回数」です。
ヘアメイクを済ませてから浴衣スリップ(浴衣用肌着)を着る
普段の洋服でもそうですが、ある程度メイクをしてから着替えたり髪の毛を整える方もいれば、髪の毛を整えた後にメイクをされる方もいます。
浴衣に限ってはヘアメイクなどをすでに整えてから浴衣を着る準備に取り掛かっていきますが、理由としては浴衣を着た後の準備で着た浴衣の着崩れを起こさないためです。
浴衣を着た状態で用意するのは普段の洋服とは違って大変なので、始めにヘアメイクなどある程度自分の身のことを終えてから浴衣を着る準備に取り掛かったほうがいいでしょう。
浴衣を着た後では腕も上がりにくいですし、一人で着付けからヘアメイクから行うときは、必ず浴衣を着る前に髪型をセットしメイクをしてからにしましょう。
浴衣を羽織り・裾ラインを決める
まず浴衣スリップもしくは肌襦袢を着て、浴衣を羽織りましょう。右と左の衿先やや上をもって両手で広げます。このとき、足のくるぶしが隠れるかどうかくらいのラインが裾位置となります。
全身の鏡があるととてもわかりやすいのですが、ない場合は浴衣を持ち上げながら左右と後ろのラインがくるぶしくらいで一直線になっているか確認しながら、浴衣の長さを調整していきましょう。
えり先を揃える
浴衣を羽織って、裾のラインがちょうどよくなったら、片方の手で左右両方の衿を揃えて持ちます。もう片方の手で背縫いを持ち浴衣のえりを後ろに引きましょう。この方法は浴衣などの和装をする際「衣紋を抜く」などと表現することがあります。
えり部分はこぶし一つ入るかどうかくらい隙間を開ける(抜く)のがすっきりと見えて浴衣が一番きれいに見えます。右手で下前のえりをもつ、左手で上前の衿を持ち、上前のえり先が腰骨くらいにくるように合わせましょう。
下前の幅を決めて入れる
裾のラインを維持しながら左手を右の腰骨当たりにあて上前の幅を決めていきます。この幅も維持しつつ、ずれないようにゆっくりと開いて下前のつま先を床よりも10センチほどあげて左へ入れましょう。
このときポイントとなるのが、脇のラインより余った部分は巻きこまないように外側に折り返すことです。細身の方は脇のラインよりも余ってしまうこともありますので、しっかりと調節していきましょう。
上前をかぶせる
下前の幅を決めて整えたら、その状態のまま上前をかぶせていきます。上前がかぶせられたら、上前の裾が崩れないようにして左手で右の腰骨のあたりをおさえましょう。
ここまででだいたい浴衣の長さと形が整っているはずですが、裾のラインがズレていたりえり先が整っていなければまだ簡単にやり直しがききます。
全身の鏡があると整っているかどうかが客観的に見れるので、初心者の方は特に全身の鏡を用意して着付けをすることをおススメします。
腰紐を結ぶ
腰紐の中心をもって押さえていた腰骨のあたりにあてます。腰紐を後ろの方へ回してお尻のあたりで交差させて脇でしめ、紐の左右を右わきの位置で結びます。
腰紐があまってしまったら、腰に巻いた部分に挟み込みながら処理をしていけばOKです。腰紐の結び方は決まっているわけではなく蝶結びでも構いませんが、片輪結びにするとすっきりとキレイに見えるので片輪結びができる方は挑戦してみましょう。
おはしょりを整える
腰紐がしっかりと締められたら、おはしょりを整えていく作業に入ります。左右の脇にあいている部分がありますが、ここを身八口といいます。ここから中に手を入れておはしょりを平らに整えていきましょう。
中央からそれぞれに左と右の脇に向かって流すように手を滑らせて整えていくときれいな形に仕上がります。このとき、前面だけではなく背面も同じようにしわを伸ばして整えるのがポイントです。
おはしょりの床(おはしょりの下部分)がまっすぐになるように整えましょう。
コーリングベルトを使って衿の乱れを防ぐ
おはしょりの床(おはしょりの下部分)がまっすぐになって整ったら、左の身八口からコーリングベルトを差し込みます。下前の衿をはさみこむようにして、後ろへまわしていきましょう。このときとめ具は下向きにしておきます。
再度後ろのおはしょりを両手で持って下にひっぱりながらえりを整えます。後ろはコーリングベルトは見える状態、前面はコーリングベルトは見えない状態になっていれば上手に付けられています。
衿合わせをし、衣紋を抜く
片方の手を使って左右のえりを合わせて持ちます。反対側のあいている手で背中心と呼ばれる背中の真ん中にある縫い目を軽くつまんで下に引っ張りましょう。
握りこぶし一つ分ほど衣紋を抜きます。えり合わせは交差している中心の部分がのどのくぼみのあたりで交差するようになっているのが一番きれいに見えます。
鏡をみながらのどのくぼみあたりで交差するよう調節していくといいでしょう。
下前を整える
浴衣の腰紐が締められると、半ば浴衣の位置は完成している状態です。鏡で見ながら下前をキレイに整えていきましょう。
浴衣の脇の空いている部分から下前をひっぱって、しわがないか見ながら手でなでるようにして整えていくのがポイントです。
引っ張りすぎるとせっかく調節した浴衣がずれてしまいますので、引っ張りすぎたり強く伸ばしたりしないようにしましょう。のどのくぼみくらいの位置で浴衣が交差できるように整えます。
上前を整える
下前と同様、上前も整えていきます。しわがあるとかっこ悪いのでしわをとりつつ、のどのくぼみあたりで下前と交差する位置に上前がくるように調節しましょう。
しわやたるみは両脇にもっていって直していきます。よってしまったしわやたるみは、うしろに回しておはしょりを引っ張ればキレイに整えられます。
前段階でしっかりとしわをとり大きなたるみがなければ、ここでは形を整える程度で仕上げられます。
しわを取る
上前と下前を整えると同時に、しわを取っていきます。えり元にしわがよらないように、両脇のあいている部分から手を入れ整えていきます。
まったくしわをよらせないというのは難しいですが、脇の間から手を入れてしわを下へ、また後ろへ回しおはしょりをひっぱり整えると、しわはほとんどなくなるはずです。
もし動いている間にしわがよってしまったようなときも、脇の空いている部分から手を入れて帯の下へいれてあげるとしわはなくなります。
伊達締めを結ぶ(前で)
そしていよいよ伊達締めを締めて終わりになりますが、おはしょりを整えたら伊達締めを持ち腰紐と同じように右手でおさえ、幅が広くなっている部分を前にぴったりと当てましょう。
はしについている紐を後ろで交差させて前にもってきて結びます。これについてはあまりきつく締めなくても問題ありません。腰紐と同じように結んだら、あまった紐については脇に入れて処理します。これで浴衣の着付けは終わりです。
浴衣帯の結び方は全年齢OK
帯の結び方で最もポピュラーで簡単にできるのが文庫結びです。帯の結び方を見てどういう形が文庫結びなのか、初心者の方はわからない方も多いかもしれませんし、ぱっとみ難しく見えるかもしれません。
文庫結びは年齢を問うことはないので、若い方はもちろんのことご年配の方にも親しまれている帯の結び方なのでぜひマスターしておくといいでしょう。
また浴衣の柄や色、帯の柄や色を選ばず、どんなシーンにもマッチしてくれる帯の結び方でもあります。にもかからず、女性らしい印象を与えてくれます。文庫結びができるようになると、アレンジのきいた帯の結び方もできるようになります。
文庫結びの特徴について
武家の女性の帯の結び方として今でも帯の基本的な結び方となっているのが「文庫結び」です。浴衣はもちろんのこと花嫁衣裳や振袖などにも合い、清楚ながら気品あふれる帯の結び方として人気があります。
簡単ながらも華やかで女性らしい印象を与えてくれるのが文庫結びの特徴となっていて、もちろん浴衣にもとてもよく似合う帯の結び方といえます。
かしこまった席でもフリースタイルな席にも合う、帯の結び方の中ではオールマイティな存在です。
手先の長さを決め、胴にふた巻きする
まず、手の長さを決めていきいます。手の長さは約50センチほどがベストです。50センチ取ったら二つ折りにして輪を下にし前に合わせます。ピンチなどを使って衿元で止めておくと扱いやすくなるのでおススメです。
胴に巻く前に、巻きやすくするためにたたむところをたたみ、胴にふた巻きしましょう。巻き終わったら一度きゅっと帯を引くようにすると、帯が緩みくくなるので、きゅっと引くのがポイントです。
帯をひと巻きして結ぶ
帯をひと結びしていきますが、ひと結びをする前にたれを斜めに折り上げて、その後ひと結びすると結び目のかさばりが少なくなるのでおススメです。
巻き終わり部分のたれを斜め内側へと折り上げましょう。その上に手をかぶせてから下にくぐらせます。
そしてひと結びして手が上にくるように結び目をクロスさせましょう。クロスした結び目を捩じ上げれば、帯のひと巻きして結ぶところまでができあがります。
羽根を作る
次に、帯のかなめでもある羽根の部分を作っていきます。羽根は、たれを肩幅よりも長め、約45センチほどとります。
もちろん、少し短めの30センチほど羽根をとっても全くかまいませんが、短い羽根はまた印象が変わるので、羽根の長さをいろいろと変えながら文庫結びに挑戦してみるといいかもしれません。
ただ、45センチよりも長すぎるとだらしない印象を与えてしまうこともありますので、45センチ、長くても50センチほどの長さで羽根を作ってみましょう。
びょうぶだたみをする
次に、たれの結び元までくるようにびょうぶだたみをしていきましょう。裏表が同じ帯であればあまり気にせずそのままびょうぶだたみをしていけばいいのですが、表と裏のデザインや柄が違う場合は、巻きだたみをします。
巻きだたみというのは、びょうぶだたみではなく帯をくるくると巻いてつくっていく方法です。これなら帯の裏と表の柄が違ったとしても、羽根の柄がきちんと合わせられるようになります。
山ひだを作る
帯のびょうぶだたみ、巻きだたみができたら次は山ひだを作っていきます。帯の中央部分をぎゅっと押しつぶすようなイメージで山を作ります。
山が作れたら、両サイドを折りあげ、両方の山ひだのバランスが良くなるように整えていきましょう。
中央部分をきちんと山にしていかないと帯のリボンの部分になるので左右対称でならなくなってしまいますので、必ず中央部分で山を作るのがポイントです。
羽根に手をつた巻きして手先を差し込む
羽根の中央のを結び目に合わせます。手を上からかぶせてふた巻きほどしてきゅっと引っ張りましょう。ここでしっかりと引っ張っておくと形が崩れません。
胴に巻いた帯の内側に手を差し入れたら、下から引き出します。下から引き出して余った部分については、内側に折って胴の中に上手にしまい込んでいきましょう。
胴の中にしまうときに、あまりもこもこしないよう気を付けながらしまっていくとすっきりとした印象になります。
羽根を整える
次に羽根を整える作業に入ります。羽根を整えるときのポイントは、左と右の羽根をそれそれに折り下げていくこと。羽根の形を両方バランスよくなるようにしながら整えていきましょう。
同時に山ひだも一緒に整えておきましょう。目で見てやるのは細かなところで、全体の形は全身の鏡を見ながらやっていくと両方の羽根の形がキレイに整います。
鏡があれば左右のバランスも見やすいので、全身が写る鏡がある方はぜひ活用しましょう。
帯を後ろへ回す
右と左の羽根のバランスが整って形がキレイになったら、いよいろ帯を後ろへ回す作業に入ります。しめた帯をしっかりと持ち、右から後ろへ回しましょう。ここの一番のポイントは右から後ろへ回すというところです。
左から後ろへ回してしまうと、せっかく合わせたえり合わせが崩れてしまいます。ですので、必ず右から後ろへ帯を回さないといけないのです。
ここで失敗してしまうと浴衣自体の着付けも台なしになってしまうので気を付けてください。
前板を入れる
右から後ろへ帯をまわし、結び目が背中の縫い目のところ、中心にきたら前面に前板を入れていきます。もちろん前板をいれずとも問題はありませんが、前板を帯の前面に入れると、実は帯周りがすっきりして見えるようになります。
たかが前板、されど前板。前板があるとさらに帯が崩れにくくなるという相乗効果もあるので、ぜひ浴衣を着るときは前板も用意することをおススメします。金額もそんなに高くはありません。
形を整えて完成
前板を入れたらいよいよ文庫結びが完成です。後ろに回った結び目の形が整っているのか再度全身の鏡で後姿を確認してみましょう。そして前面や横から見たときに帯の形は美しく仕上がっていますか?帯のずれなどはないでしょうか。
ちょっとしたズレや型崩れなら直せますが、あまりにもずれていたり直らないような時はもう一度結びなおしてみましょう。
文庫結びはあまり時間をかけずできる帯の結び方でもあるので、ぜひマスターしさっと結べるようになりましょう。
【番外】格上げして着物のように浴衣を着る
浴衣と聞くと、ちょっとカジュアルな和装のイメージがありますが、浴衣を着物風に着ることで大人の女性でも浴衣を上品かつスタイリッシュに着こなすことができます。
浴衣を着物風に着る時は必ず長襦袢を着ることが大切です。長襦袢を見せて着ることで着物風に見せることができるようになります。
また、浴衣の帯は半幅帯が一般的ですが、着物のときに締める帯をわざと浴衣に締めると着物風に見えます。半幅帯ではなく名古屋帯と呼ばれる帯を使ってみましょう。
ただ、浴衣は夏に着るものなので、麻など涼しげな素材で作られた名古屋帯をチョイスします。
そして足元も浴衣は素足に下駄が基本ですが、着物風の着こなしをする時は足袋を履いて下駄を履きます。そして、浴衣の柄も落ち着いた色のもの、光沢などがあるものは着物風に見える浴衣の素材になります。
半巾帯から名古屋帯に
ここからはもう少し細かく、浴衣を着物風に見せられる帯の名古屋帯について解説していきます。名古屋帯といっても仕立て方が3通りあり、一般的な仕立て方は名古屋仕立てと呼ばれています。
胴に巻くところから手先まで半分に折って作られているので扱いやすいという特徴があります。
また松葉仕立てというのは、手先になる部分だけが半部に折って仕立てられている帯で、袋帯と同様、たれ先から手先まで半分に折らずにお太鼓の幅で仕立てられているおそめ仕立てがあります。
名古屋帯でも一般的な名古屋仕立てなら、着物風にみせつつ帯の扱いも半幅帯とあまり変わりがないので、初心者の方でも活用できる帯の一つだと言えます。
長襦袢or半襦袢を着て半衿を見せる
浴衣と着物の違い、それはどこだと思いますか?浴衣はえり元はすっきりとしていて、下に着ている長襦袢や半襦袢が見えないように着付けをしていきます。
着物風に着る時には、通常であれば隠す長襦袢や半襦袢をわざと見せて着付けをするのです。
着物をイメージしてみてください。着物のえり元は何層も着ているように着付けをしています。つまり、浴衣でも長襦袢や半襦袢を見せることによって、たった1枚だけだったとしても浴衣を着物のように見せることができてしまうのです。
浴衣は夏場に着る機会が多いですので、長襦袢や半襦袢の生地は麻など通気性の良いものを選ぶようにするといいでしょう。
足袋を履く
浴衣を着るときは、一般的に素足に下駄やサンダルなどが多いのですが、着物風に着るときは足袋をわざと履きます。
足袋を履くことによって少しかしこまった風に見せることができるので、カジュアルになりやすい浴衣でもきっちりと着こなしているように見せられます。
少しかしこまった雰囲気のあるような場所でも、足袋を履いたり着物から長襦袢を見せることによって浴衣でも出かけられることもあるでしょう。
高級浴衣が着物風の着こなしに向いている
浴衣というと、着物よりもカジュアルな印象を受ける和装ですので、柄や色などもカラフルだったりすることが多い傾向にあります。大きな柄や多色使いの浴衣などは、着物風に着るよりもそのまま浴衣として着たほうが柄も映えます。
着物風に見える浴衣というのは、もちろん柄が入っていていいものなのですが、生地などで違いを付けるとより一層着物風に見せられるようになります。
浴衣の中でも比較的お値段がいいもの、落ち着いた色のものなどを選ぶことによって浴衣なのに着物のように見え、上品カツ大人の雰囲気を醸し出してくれます。浴衣も生地や柄一つで楽しみ方がまた変わるのです。
綿絽
綿絽という生地は、レース状になるようからみ織りという方法で織られている素材で、清涼感がある夏にピッタリの生地のひとつ。
横に感覚が入るような織り方がされていて、透け感があるので、長襦袢や半襦袢がないと下着が透けてしまう可能性があります。
この綿絽は着物風に着こなしたいときの浴衣の生地として人気があります。一つ持っているとそのまま浴衣としてももちろんですが、着物風に着たいときにもとても重宝しますので、ぜひ1枚は持っておくといいでしょう。
透け感があるので、合わせるときの足袋もレース素材のものや透け感のあるものにするとバランスが取れていいかもしれません。
大人の雰囲気が出やすいのも綿絽の特徴なので、いつもと違った雰囲気を出したいときにおススメです。
紅梅(勾配織)
浴衣の中でも紅梅は夏着物と言われているくらい、着物風に浴衣を着るときにおススメの織り方です。紅梅というのは、紅梅織という綿素材であれば綿糸を使って格子状に織り上げた生地を指しています。
もう少しわかりやすく言うと、紅梅も使う糸によって呼び名が変わり綿を使って作られているものを綿紅梅、絹を使ったものを絹紅梅といいます。
格子部分以外を綿で織れば綿紅梅、格子部分以外を絹を使って織ったものは絹紅梅です。
表面にはデコボコができるので生地すべてが肌に張り付くことがないですし、着心地がいいので夏に適しています。透け感が強い素材でもあるので襦袢を着ることで着物風に仕上げられます。気軽に着て外出できる夏着物だと言えます。
絞り
江戸時代から変わらず愛されている生地が絞りです。絞りといったら浴衣を連想される方が多いくらい、最もポピュラーな生地かもしれません。
絞り染めを取り入れて作られた生地で、伝統的なものだと有松絞りが有名です。手作りのものは一つ一つの風合いが異なり、何とも言えない味わいを持っています。
大人っぽさを醸し出しつつ夏の涼しさもあり、浴衣生地ではあるものの着物のように着て楽しむことができるため、とても人気があります。
絞りと聞くと帯のイメージが強い方もいるかもしれませんが、浴衣の生地で絞りを取り入れることによってカジュアルに見える浴衣も着物風に着られるのです。
絞りは落ち着いた雰囲気を出してくれるため、若い方はもちろんミセスの方にもおススメです。
長板中形
浴衣の染め方の技法の一つとなっていて、江戸中形ともいわれています。藍一色による染めもので、長い板に木綿の白い生地を張り付けて順番に型紙を置いてヘラなどを使って染めていきます。
乾燥したあとに表の模様と重なるように生地の裏面に同じ型紙を置いていき一気に染め上げるのですが、かなり手の込んだ染め方となっているので、浴衣の生地の中でも高級です。
その分気品のあふれる印象を与えてくれるので、夏着物にピッタリです。
やや古めかしいというか、一昔前のような模様が着物風に着るときに適していて、1枚あると浴衣としてもそうですが、着物としてかなり活用することができるのでおススメです。
注染
注染と呼ばれる技法を使って作られていて、レトロ感がたまらないと近年とても人気がある生地です。幾重にもした生地の上から染料を注いで染め上げます。
注ぎ染め、本染めとも呼ばれることがありますが、一般的には注染と呼ばれています。
注染は裏もしっかりと染められていて、パッと見ただけでは表なのか裏なのかわからないくらい両面が染まっています。手がかかっている染め方なので高級な浴衣の生地として注目されています。
レトロ感が着物風に見えることから、夏着物として定着してきている生地のひとつとなっています。
職人が手作業で行っているので、一つとして同じものがないこと、なんともいえない風合いがより一層味を出してくれているので一枚持っているととても重宝します。
覚えれば着物は簡単に一人で着れるようになる
浴衣も着てみれば意外に一人で着れてしまうものです。同じように夏着物も長襦袢や半襦袢を着たり、足袋を履いたり、帯の種類をかえたりするだけで簡単に浴衣を着物風にすることができます。
さらにちょっとだけ工夫をするだけですし、その工夫は決して難しいものではないので、浴衣が着れるようになればすぐに着物風の着こなしもできるようになります。
浴衣と本当の着物はやや違いがありますので、浴衣が着れるようになったからといって着物も着れるかといえばそうではないかもしれませんが、浴衣を着物風に着ることは十分できるくらいの技術は身についています。
ぜひ浴衣のアレンジ法として、着物風に着る着こなしもマスターしてみましょう。
まとめ
「浴衣を着てみたいけれど難しくて着れなさそう」「一人で着るなんてできない」というイメージを持っていた人も、ここまでの記事で浴衣を一人で着ることはそんなに難しくはないということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
確かに文字だけで見るとわかりにくかったり伝わりにくいところもあると思いますが、今はインターネットが普及したことで動画などで何回も見ることができます。
動画などを見て一緒にやってみることで自分一人でも浴衣を着ることができるようになりますし、今回ご紹介した基本的な結び方「文庫結び」以外の結び方もチェックできるので、さらにアレンジができるようになります。
浴衣や帯の数が少なくても工夫で着物風にできる
浴衣も帯もたくさん種類があるに越したことはありませんが、数が少なくてもちょっと工夫をするだけで着物風に着ることができたり、帯の結び方を変えるだけで同じ柄や色の生地だったとしても、印象が変わってきます。
今はすでに帯が形になって差し込むだけで使えてしまうワンタッチのものもありますが、思っている以上に浴衣というのは覚えてしまえば簡単に着付けできてしまいます。
夏の風物詩でもある浴衣を一人で着れるようになれればさらに楽しむことができます。