女性と比べると種類の少ない男性の着物ですが、その中にも勿論「格」があります。例えば黒紋付きは最も格が高くあらたまった場で着る礼装にあたりますし、紬や浴衣はカジュアルな場で着る普段着で、これらが混同されることはありません。
また洋装の場合と同様、使用する小物もそれぞれ服の「格」に合わせなければなりません。極端な例えを用いるとすれば、タキシード着用時にスニーカーを履くわけにはいかない、ということです。
これは男性の帯にも当てはまります。着用シーンに合わせて、つまり着用する着物の格に合わせて帯を選ばなければならないわけです。
そこで、ここでは男性の着物の帯の種類とそれぞれに付されている「格」について徹底解説してみたいと思います。
帯の名称は「長さ」と「幅」で分類されている!その理由とは?
女性の帯は種類が非常に多く、それぞれ長さや幅、仕立て方によって呼び分けられています。例えばフォーマルな場で着用する「袋帯」の長さは約4m50㎝ほど、カジュアルな場で着用する「名古屋帯」の長さは約3.6mほど。
なぜ長さや幅で分類されているのかというと、使うシーンによって結び方が決まってくるため。
例えばフォーマルなシーンでは二重太鼓結びが一般的ですから、袋帯は長めにとっておく必要がありますし、カジュアルなシーンでは一重太鼓結びで良いので、名古屋帯はそれほど長く取る必要がない、というわけです。
では問題の男性用帯ではどうかというと、勿論帯の種類によってある程度幅と長さが決まっているのですが、女性のものほどサイズが重要というわけではありません。
女性の和装とは違い、男性の和装は帯の結び方がそれほど着物の印象を大きく変えるわけではないからです。
とは言え、フォーマルな場とカジュアルな場ではやはり多少なりとも帯とその結び方に違いがありますから、着物を着る時には注意が必要です。
帯の長さは合わせる着物や使う場面で選ぶ
先ほどの女性の着物の例で言えば、フォーマルなシーンに着用する袋帯は、当然フォーマルなシーンで着用する「黒留袖」や「訪問着」「振袖」などと合わせて使うことになりますし、カジュアルなシーンで着用する名古屋帯は、「紬」や「小紋」など普段着として着用する着物に合わせて使用することになります。
つまり帯も、自然と「合わせる着物」が決まってくるわけですね。
これは男性の和装に関しても当てはまります。男性の着物にも「格」がありますから、それに合わせた「格」を持つ帯を選ぶ必要があるわけです。
目次
シーン別に合わせたい!男性の「帯」を徹底解説
女性の帯は着用するシーン、着物の格に合わせて10種類以上ありますが、実は男性の帯はたった2種類しかありません。合わせる着物自体の種類も女性と比べると格段に少ないため、帯の種類はもっと少なくなるんですね。
そのたった2つしかない男性の帯とは、「角帯(かくおび)」と「兵児帯(へこおび)」。それぞれの特徴と着用シーン、合わせる着物について解説します。
角帯とは?特徴、使用用途(シーン)、長さ、幅、使い方、注意点などを解説
「角帯」はもう1つの「兵児帯」と比べて「格」の高い帯で、幅約20㎝ほどの帯地が縦に2つ折りになっています。長さは大体4mほど。
袋状に織られた袋帯の他に、単帯や中に帯芯を入れて仕立てたものもあります。兵児帯と比べてカチッとした締め心地になるのが特徴です。
角帯を黒紋付きなどと合わせて礼装用として使用する場合、絹糸を用い厚みや張りのある生地に仕上げた「博多織」を選ぶのが一般的ですが、礼装の場合袴を着用するため帯はそれほど目立ちません。
しかし角帯は礼装用だけでなくカジュアルなシーンでも使用できるオールマイティな帯なので、普段着用にも使用でき、その分兵児帯と比べて色柄や素材のバリエーションも豊富です。
着流しなど帯が目立つ着方もありますから、着物の素材感や色とのバランスを考えて気に入ったものを選ぶと良いでしょう。
角帯の結び方は主に「貝の口」と「浪人流し」の2つで、貝の口は粋な雰囲気が魅力、浪人流しは背中が平らになるので車の運転などが楽なのが良いところです。
角帯を占める時には腰(お腹周り)ではなく腰骨の上から巻きましょう。切り落としたままの状態の角帯もあるので、その場合には端を内側に折り込んでから使用するようにしてください。
兵児帯とは?特徴、使用用途(シーン)、長さ、幅、使い方、注意点などを解説
「兵児帯」はカジュアルシーンや部屋着として着る着物に使い、角帯と比べると格下です。角帯がフォーマル・カジュアルの両方に使えるのに対し、兵児帯はフォーマルにはNG、必ず紬や浴衣などの普段着に着用します。
兵児帯は約74㎝程の大幅のものや約50㎝位の中幅のものをしごいて用いるため「しごき帯」とも呼ばれますが、長さに特に決まりはなく大体3m50㎝~4mほどです。
素材は絹や合繊で角帯と比べると柔らかく、幅広なこともあって締めたときに体に負担がかからず使用感が楽なのが特徴です。
主流なのは黒や紺、茶、灰色の縮緬やモスリンなどの、糸でくくって部分的に防染して模様を染める「絞り染め」か、あるいは無地のもので、巻くと角帯より大きく見えるのでインパクトがあります。
兵児帯の結び方は主に「片わな結び」で、後ろで蝶々結びや片蝶結びをするだけなので、誰でも簡単に結ぶことができます。
蝶々結びですから余った部分が垂れ下がり見た目にもリラックスした感じが出るため、前述の通りフォーマルな場では使用できないわけです。
男性の帯は2種類しなく、どちらも着物や浴衣で共用ができる
このように、男性の帯は「角帯」と「兵児帯」の2種類しかないので、和装をする時にどの帯を使うかは二者択一、実にシンプルです。(参照:初心者でも簡単男性のゆかたの着付けと帯結び | ファッション・雑貨 | NHKらいふ)
そのうえ女性の帯の場合例え格付けされていたとしても柄や素材感などによってもう少し各上のシーンやあるいは格下のシーンで使用できることもあり判断に迷うこともあるのですが、男性用の兵児帯は必ずカジュアルシーン・部屋着と決まっているので迷うことがありません。
それ以外のシーンでは角帯を使用すれば良い、というわけです。更に言えば、角帯はフォーマルにもカジュアルにも使用できるため、これさえ持っていればどんなシーンにも着用できます。
黒紋付きにも浴衣にも合わせられるわけです。逆に用途をしっかり分けたいなら、角帯の素材感で決めると良いですね。
まとめ
女性の和装と比べるとはるかに種類が少ない男性の和装ですが、少ない中にも「格」があり、シーンに合わせて着用します。
例えば黒紋付きならフォーマルに、浴衣ならカジュアルに、といった感じです。そしてタキシードにスニーカーを合わせたりしないように、着物にもその格に合わせた帯を選ばなけれななりません。
とは言え男性用の帯は「角帯」と「兵児帯」の2種類しかなく、選び方は非常にシンプルです。
「角帯」は硬めに織り上げられた、フォーマルにもカジュアルにも使用できる帯で、その素材感や色柄によってどちらのシーンで使うか決めれば良いでしょう。使用するときは「貝の口」か「浪人流し」で結びます。
もう1つの「兵児帯」は柔らかい素材で幅広のものをしごいて「片わな結び」にして使用します。だらりとした蝶々結びになるため、フォーマルな場には使用できません。こちらは必ず浴衣や紬などの普段着に着用しましょう。
着用シーンを選ばない角帯は1本持っていればオールマイティに活躍しますが、締め心地の楽さで言えば兵児帯に軍配が上がります。フォーマルにもカジュアルにも頻繁に着物を着たいという人なら、両方持っておくと良いかもしれませんね。