着物や浴衣を着て、着崩れてしまうことも少なくありません。ただ、着ている時間が長ければ長いほど、着崩れは大なり小なりおこってしまうともいわれています。
着物や浴衣が着崩れるのは、体に合わせて生地を裁断していればあまり起こらないとされていますが、ほとんどは身体に沿って裁断をしていないため、着崩れが起こってしまいます。
着物や浴衣を着ているときに足が見えてしまうと、袖が持ち上がって腕が見えてしまう、特に襟元やおはしょり、帯がずれてしまう、ほかにもありますがこれらが一般的に多い着崩れの状態です。
背中にゆるみができたり、腰回りが膨らんでしまうのも着崩れの一つです。半衿が隠れてしまうのも着崩れている状態とされます。
ちょっとした動きで着物や浴衣は着崩れを起こしてしまいます。たしかに、普段と同じような動き、同じような歩き方をしてしまうと着崩れやすくなります。
とはいえ、着崩れてはいけないと思うがために、動きをセーブしてしまっては元も子もありません。歩き方や座り方、ちょっとした動きを気を付けるだけで、長時間着物を着ていても着崩れるということは少なくなるということにもなるわけです。
目次
なぜ着崩れするのか3つの原因を徹底解明
着物や浴衣の着崩れには、大きく分けて3つの原因があります。
- 補正がしっかりとできていない
- 歩き方や所作が大きい
- 腰ひもがしっかりと締まっていない
この3つが主な原因と考えられます。
ということは、この3つの点をおさえるだけで、着崩れを起こしやすい着物や浴衣もキレイに着られるようになるということでもあります。
もちろん、長時間着ていれば着崩れてしまうものです。ですので、着崩れを起こしても心配いらないように、自分で着崩てしまったら直す方法を覚えておけばいいのです。
着崩れたら自分で直せないから着ないのではなく、原因を知り気を付け、プラス直す方法を覚えておくことをおススメします。
1.補正がしっかりできていない
着物を美しく着る、着崩れしないためには補正がとても大切なのですが、補正がしっかりとできていない、ポイントをおさえていないがために着崩れを起こしてしまっている人がかなりたくさんいます。
補正をしているしていないは人には見えません。ですので、適当な補正をしていないでしょうか。補正に手を抜いてしまうと、せっかくキレイに切れた着物や浴衣でも着崩れをすぐに起こしてしまいます。
自己流でタオルを巻き付けているだけ、タオルを当てる位置が間違っている、本来ほしいボリュームに足りていない、もしくはボリュームをつけすぎなど、うまく補正できていないことが原因で着崩れは簡単に起こってしまうのです。
2.歩き方や所作が大きすぎる
着物や浴衣は洋服とは違って、動きが制限されるものです。かといって普段と同じように歩いていたらとたんに着崩れを起こしてしまうのです。
和装には和装に適した所作というものがあります。歩き方、動き方、体の動かし方などで長時間着ていても着崩れを予防することができます。
普段の洋服と同じように、足を開き、腕を振って歩いていないでしょうか。階段や坂道も、普段と同じような感覚で登ったり下ったりしてはいませんか?
浴衣や着物は動きを制限されるため、その制限に逆らいすぎず、動ける範囲で動く、無理をせずに歩くなどするだけで所作による着崩れはかなり予防することができます。
3.腰紐がきちんと締まっていない
腰紐が緩いと感じたら締めなおす、これが大切です。腰紐が緩いと着崩れが起きて直したとしても直しきれず、すぐに戻ってしまいます。
腰紐を締め、苦しいと感じるのは自分の腰紐を付ける位置があっていないからです。腰紐をつける位置が自分にあったところであれば、締めても苦しくも痛くもありません。
着物は最初の腰紐1本で留まっていますが、ただ、腰紐をきつく締めておけば着崩れしないかといえば実は違います。
きつく締めると苦しいから、痛くなるからなどの思いがあってしっかりと締められないという方もいますが、自分に合った位置を見つけることで着崩れをしない腰紐の締め方をマスターすることができます。
ちょっとした工夫で変わる!着物や浴衣の着崩れ防止法
着物や浴衣の着崩れを防止するには、「補正をしっかりと行うこと」「歩き方や所作を気を付けること」「腰紐をきちんと締めること」この3つだけです。
ただ、腰紐を締めるといったら痛いぐらいに締めればいいというわけではありませんし、動作や歩き方を極力少なくすることで着崩れしないというわけでもありません。補正も適度がいいのであって、しすぎてもしなさすぎてもよくないのです。
着物や浴衣をキレイに着こなせる女性はとても素敵です。日本ならではの和装ですから、着崩れを起こしにくい「ちょっとした工夫」「ちょっとしたポイント」をおさえ、着物や浴衣を楽しんで着れるようになりましょう。
着物と浴衣の着崩れを直し方の基本はほぼ同じ
生地の厚さや重さなどは違えど、着物と浴衣というのは同じような着崩れ方をします。ということは、着崩れの仕方が同じなら直す方法もほとんど変わらないということになります。
直す方法さえマスターしてしまったら、着物を着ようが浴衣を着ようが、着崩れを恐れることもなくなります。もちろん、自分だけではなく周りで着物や浴衣を着ている方の着崩れも直してあげることができるようになります。
1.補正
やせ型の人は、胸元と腰の部分に補正が必要になります。逆にふっくらとされている方は、苦しくない程度に胸元を平らに抑える補正をします。いずれにしても寸胴体系にするのが補正のポイントです。デコボコをなくすという感じです。
タオルを巻いて重ねる、これが昔ながらの補正の方法でしたが、まだ着付けが上手にできないうちはタオルでの補正は失敗につながってしまうこともあります。ですので、簡単にできる補正パッドなどを上手に活用していきましょう。
一人で着付けをする時は特に、タオルを使っての補正は難しいですから、補正パッドを使うのが正解です。もちろん、自分に合った補正パッドや補正器具を使うというのが大前提です。
2.歩き方や所作
着物や浴衣を着ているときの歩き方、所作は、丁寧に着物に合った動き方をするのがポイントです。洋服に比べて動きが制限されますので、その制限に逆らって歩かない、動かないことが大切です。
また普段より少し内また気味に、歩幅を狭くして歩きます。
また腕は、肩よりも上には上げない、両腕は振らずわきにつける、振り向く際は上半身や顔だけではなく、身体ごと回すイメージで振り向くようにします。
階段の上り下りは、裾を軽く持ち上げて歩くようにしましょう。大きな着崩れが起こる前に、ちょっとした着崩れが起きたなと思ったらこまめに直すようにするのも、所作による大きな着崩れの防止になります。
3.腰紐の締め方
腰紐=きつく締めるというイメージが強いのですが、実は違います。腰の上にしっかりと載っていて締め付け感がある程度あり、それが「心地よい」と感じるところでしめるのがポイントです。
着物や浴衣を着て食べる機会があるのであれば、腰骨の上のあたりの帯の線はしっかりと締めること、臍までの間は緩めにしめればお腹いっぱいに食べられます。
ぎゅーっと痛みがあるほど締めればいいというわけではありません。これは辛いばかりですので、腰骨から臍までの部分についてはしっかりと締めるところ、緩めて締めてもいいところをポイントをおさえれば問題ありません。
今すぐできる着崩れしたときの直し方と対処法
大きな着崩れが起こってから直すよりも、小さな着崩れや気になる部分が出てきたらその都度直すようにした方が、着崩れが出ても直せなくなってしまうようなことはなくなります。
また、着崩れが直せるとき、直せない時もあります。どこの部分が着崩れてしまったのかによっても直し方と対処法というのは異なってきますが、あまり気にしすぎても着物や浴衣を楽しむことができません。
ですので、着崩れても直せるように直し方と対処法をある程度おさえておく、知っておく、そして実践できるようにしておくことをおススメします。自分自身の着崩れも、周りの方の着崩れも直すことができるので大変重宝すること間違いなしです
胸元がはだける場合(衿元がゆるんできた場合)
和装で最も美しいとされているのが襟元です。和装のポイントともいえる部分ですが、その部分がゆるんでしまったりはだけてしまうと、だらしない印象を与えてしまうことがあります。
もしも、胸元や襟元がはだけたり緩んできてしまった時は、まず、左の身八つ口に左手を入れます。左手を入れたら、下前の襟元を整えましょう。そして、上前の衿を直しつつ、おはしょりの衿の部分を引いて整えていきます。
目で確認しながらできる部分の直し方ではありますが、鏡を見ながら行うとよりキレイに、全体を見ながらできますので、できれば化粧室などの全身、あるいは上半身が写る鏡を使って直してあげるとキレイにできます。
こまめに襟元をみたりしながら、ゆがんでいないか、はだけていないかを確認し、多少着崩れているなと感じたら、その場でさっと直してあげると大きな着崩れにならずに済みますのでおススメです。
腰にたるみが出てきた場合
座ったり立ったりといった動作が多くなると、大なり小なり腰からお尻にかけてたるみが出てしまうことも少なくありません。もし腰やお尻のあたりにたるみが出てきてしまった時は、おはしょりをめくりあげます。
腰紐の上のおはしょりを内側からもちます。そしてたるんだ部分を引き上げます。もし、引き上げたときに腰のあたりにしわができてしまったら左右に伸ばして、おはしょりもキレイに直すと腰のたるみもおはしょりも元に戻ります。
ゆるんでしまったり、たるんでしまった部分の真下のおはしょりを引っ張ってあげるだけでもすっきりとたるみが取れます。
まだたるみが少ないうちはおはしょりを引っ張るだけで直ることもありますが、あまりにも腰回りにたるみができたり、もこもことしてきてしまうときは、着物のサイズがあっていないこともあるので、自分の体と着物のサイズがあまりにも違いすぎないかチェックしてみることをおススメします。
おはしょりが乱れた場合
おはしょりが引っ張られて短くなる、体の動きによって崩れてしまうことがあります。このような時は帯の下側にまず手をいれます。手のひらでなでるようにたるんでしまっている部分を左の脇の方に送っていきます。
たるんだ部分にタックをつけてたたむようにして後ろの身ごろに倒せば、引っ張られて短くなったりしわができてしまった時は直せます。
また、着付けをしているときに腰紐をしっかりしめていないことで裾が落ちてきてしまったりします。このような時は、おはしょりの下の方から上前の衿先を持ちます。
そして突き上げるようにして下がっている部分を腰紐の中に入れます。裾がキレイに整ったらおはしょりを再度整えて終わりです。
おはしょりの崩れも着物のサイズがあっていなかったり、腰紐がしっかりと締められていないことが原因となっていることがほとんどなので、着付けのときにしっかりと腰紐を締めるなどするだけでおはしょりの崩れを予防することができます。
裾が落ちてきた場合(上前が崩れた場合)
裾が落ちてきてしまって着物をひきずってしまう、形がおかしくなってしまった時は、腰紐をしっかりと締められていなかったり、上前の裾を踏んでしまっていることが大きな原因となります。
上前が崩れてしまった時は、さがってきてしまっている裾を腰紐の上にまず引き上げます。ひきあげたものをおはしょりの下の腰紐の中に入れ込みましょう。
もし、このとき腰紐を締められるようであれば締めなおすことが大切です。腰紐が緩いままだと、上前が再度崩れてきてしまうので、腰紐を締めなおすのが着崩れ予防になります。
もちろん、着物を着直さなくても腰紐を締めることが出来るので、その方法を覚えておくのもいい方法だと言えるでしょう。
ちなみに、下前というのは着物を着た際に下に来る部分を指しています。上前というのは、着物を着たときに上に重なる部分を指しているので、上前が崩れるというのは、上に重なっている部分の着崩れを指しています。
背中がたるんできた場合
着物を長時間着ていると、背中がたるんだり腰回りが膨らんできてしまうことも意外にあります。背中のたるみは、花魁ではOKですが、キレイに着こなすには背中にたるみは必要ありません。
背中にたるみやゆるみが出てきてしまったら、袖付けの下の身八つ口から手を入れます。そして、下前の衿を引いて胸紐に挟み込みましょう。
上前の衿は衿元をおさえながら引くことでおはしょりを整えられますし、キレイにゆるみやたるみを調節することが可能です。
また、背中のゆるみやたるみは、イスに腰を掛けたときに前にかがむ動作が多い時、腰の周りのふくらみも長時間イスに座っているような時にできやすくなります。
背中がたるむと衿元が浮いてしまい、印象がだらしなく見えてしまうので、背中のたるみや腰回りのふくらみはその都度直すようにすると、直すにも直せずどうしようもなくなってしまうということがなくなくなります。
帯下がずれてきてしまった時
実は帯び周りや帯下も着崩れしやすい場所ということを知っているでしょうか。できるだけこまめに気に掛けること、どうしようもなくなってしまう前に化粧室などでチェックして小さいうちに着崩れを直すことが大切です。
帯下がずれてしまった時は、帯の下に手をぐっと入れて持ち上げた後に帯の上をもってひきあげます。
元の位置に戻るように整えますが、それでも下がってきてしまうような時は小さめのタオル、ハンディタオル、ティッシュなどを使って帯の下の部分に差し込みましょう。胴回りのゆるみを解消すれば帯下がずれることを予防できます。
また、帯のたれをはねあげおはしょりを内側に手をいれます。腰紐の上のおはしょりを内側から持ちます。腰上に引き上げるのですが、このとき引きすぎると裾の丈が短くなってしまうので気を付けてください。
椅子から立ち上がるとき、車から降りる際は帯のたれがはねあがってしまうこともあるので、はねあがっていないかこまめに確認することをおススメします。
半衿が隠れてしまいそうな時は
半衿が隠れてしまっては、着物の良さが半減してしまいます。半衿が隠れたり大きく出てしまうときは、身八つ口から手を入れて衿を引っ張ります。
着付けするときに着物の衿幅を広く摂りすぎてしまうと、半衿が隠れてしまう原因となるので、まず着付けるときに衿幅を広くとりすぎないようにすることも大切です。
着物の衿は場を内側に折り込んで細くします。おはしょりの部分で衿先を引っ張って整えるのが半衿の上手な作り方です。
また、衿はバストトップを包み込むように合わせないと衿の交差の角度が徐々に下がってきてしまい、半衿が着物に隠れやすくなってしまうともいわれています。
一度着てしまうと衿元はなかなかキレイには直せないともいわれているため、衿元の崩れを最小限にするためにも、長襦袢の着方をもう一度勉強しておきましょう。
長襦袢は身幅が足りているものにし、もしも身幅がたりないのなら両衿元に布を縫いたします。そうするだけでも衿先がきちんと固定されるようになります。
お太鼓にしわが寄ってしまったら
お太鼓にしわが寄ってしまったりすることはありませんか?せっかく締めても、しわができてしまうととがっかりしてしまいます。
お太鼓にしわが寄ってしまったら、帯山をもって左右にひっぱります。お太鼓の下線部分をおさえて、お太鼓の中から上線をつくようにしながらベストな形まで整えていきます。お太鼓全体をなでながらしわをとっていきます。
帯をお太鼓結びにする際は、最も下の部分に隠し紐を通すのがポイントです。下へ引っ張るようにして紐の両端をもって動かしながら前や横で結びます。
帯の下の部分から上へと隠すようにして入れますが、これだけの簡単な作業でお太鼓の崩れを直すことができ、着物で外出するような時は紐を1本持っておくといざというときにとても役立ちます。
隠し紐を使うことでイスに座ったり階段を上ったりといった動作でも着物が着崩れにくくなるので、大きな荷物になることもないですから、1本紐をもって外出することをおススメします。
着崩れがどうしても直せないときの秘密アイテム「安全ピン」
着物や浴衣に着慣れていなかったり、何度直しても同じように着崩れてしまうとき、安全ピンを使うととても簡単に着崩れを直すことができます。
即効性がある上にとても強力な応急処置になるので覚えておいて損をすることはありません。
安全ピンを使う方法は最終手段で着物に穴をあけることになるのであまりおススメではありませんが、外で着物がはだけてしまっては元も子もありませんので、安全ピンも何本か持ち歩いているといいでしょう。
ずれてきてしまっているところは布を多くとって安全ピンでとめればOKです。着崩れの原因のほとんどは体の動きなので、体の動きに気を付けながら直せない部分については安全ピンを使って応急処置しましょう。
着崩れしないためにきつく締めすぎるのはNG
きつく締めすぎても苦しく、緩くては着崩れてしまう、着崩れの原因は締めすぎても緩すぎても起こります。
襦袢も着物の前を締めると苦しく、かといって後ろがしまっていないとどんなに引っ張って背中のたるみをとったとしても衣紋が落ちつきません。衿元が崩れてしまう原因にもなります。
ですが、腰紐だけはしっかりと前も結んでおかないと着崩れを起こします。腰紐は自分の体に合っている部分を見つけられると苦しくなることはなく、心地の良い締め付け感になります。
後ろの腰紐は指一本が通るくらい、前の腰紐は指一本が通るくらいではきついので、片手の指が全部入るくらいにしておくのがポイントです。
まとめ
着物や浴衣は着ている姿がきれいなだけではなく、そのときの動作、歩き方なども着物や浴衣をキレイに見せることができるポイントとなります。女性らしさを引き出してくれるのが着物や浴衣です。
着崩れを防止するには、着崩れをした時の直し方ももちろん知っている、行えるということは大切ですが、着物や浴衣を着たときの正しい所作を身に着けておくということも重要ではないでしょうか。
着崩れをしない動作、所作を心がけるだけで着崩れはかなり抑えられるはずです。
また、自分の体に適した補正をすること、腰紐をしっかりとポイントをおさえて締めること、所作は小さく上品にするということも忘れてはいけません。
もちろん、長時間着物や浴衣を着ていれば、大なり小なり着崩れを起こしてしまうものです。だからといって焦ることはありません。対処の方法、直し方を知っていれば元通りとまではいかないかもしれませんが、しゃんとした姿に戻ってくれます。
着物や浴衣での車の乗り降り、お手洗いなども普段とはちょっと動作が変わります。着物や浴衣を着た際にどういった動きをするべきなのか、事前に調べておくことをおススメします。
普段着ることがない着物や浴衣ですが、着崩れが怖いからといって敬遠することはありません。