男性は女性ほど着物を着る機会は少ないでしょう。そのため、「どのように着たら良いのか」「帯の結び方は?」など戸惑ってしまう方も少なくありません。しかし実際は、女性よりも簡単です。そのため着付けを覚えれば十分さまになります。
男性の帯は、角帯と兵児帯の2種類ありますが、もっともポピュラーなのが角帯の貝の口です。着流しもしっかり決まるので、スタイリッシュに着こなすことができるでしょう。兵児帯も、コツさえ掴めば簡単に結ぶことができます。
もちろん、これらの結び方は浴衣でも代用できますので、今年の夏祭りで浴衣を着ようと考えている方はぜひ参考にしてみてください。どんどん着て着物に慣れましょう。
目次
男性の帯には2種類ある
帯にはいろんな種類がありますが、男性の場合は「角帯」と「兵児帯」の2種類になります。角帯は貝の口と浪人流しに分けられ、一般的な結び方は貝の口です。スタイリッシュな結び方なので、着流しもパリッと決めることができるでしょう。
一方で浪人流しは、さらにシンプルな角帯です。それでいて着崩れしにくいので、浴衣などサラッと着たいときに良いかもしれません。兵児帯は、ちょうちょ結びを用いた結び方です。個性的なので、粋に着こなしたい方にピッタリでしょう。
それぞれの帯は使うシーンが異なります。そのため、普段使いできるものをきちんとした場所で使うとマイナスになりやすいので注意しなければいけません。ここでは、角帯と兵児帯の特徴や使うシーンを見ていきましょう。
角帯とは?
角帯は、木綿・絹・化繊の3つの素材に大きく分けられます。それぞれ価格も異なり、正絹になると高くなるでしょう。幅は、およそ10cm前後です。
長さは4m前後が基本の角帯になります。しかし厳密な規格はないため、製品によって特徴は異なってきます。
またポリエステル繊維のものは滑りやすく着崩れしやすいので、どんなに安くても避けたほうが無難です。
オールマイティな帯なのでいろんなシーンで使えますが、ネットで買うよりも直接手に取って質感や布地などを確認してから買うほうが安心でしょう。
使い方は、長着の上に巻いてから角帯を巻きます。腰骨の上から巻いていくのが正しい巻き方になります。中には端に房が付いているものや切り落としたままのものもありますが、結ぶときは内側に織り込んで隠すようにしてください。
先にも述べたようにオールマイティに使うことができ、季節を問わず使えるのも角帯のメリットですが、格式は紬(つむぎ)・絽(ろ)・緞子(どんす)などです。
兵児帯よりも格式があり、前途の3つは一般的なものになります。もっとも格式が高いのは「爪掻本綴織綴織」。しかし生産数と流通量が少ないので非常に価値の高い帯になっています。
兵児帯(へこおび)とは?
兵児帯は、ラフに着こなしたいときに用いられます。ボリューム感がある結び方なので、お祭りなどに最適でしょう。もともと若い男性が付ける帯として名付けられ、ちりめん生地が特徴です。
一般的に絞りか無地のものが用いられていますが、子供用や浴衣に使われるものはフワフワしたカラフルなものが多いでしょう。
ラフなスタイリングなので、浴衣や普段着の着流しとして使う方が多く、結び方もちょうちょ結びができれば簡単にできます。生地は、先ほども述べたちりめんが多いですが、羽二重や木綿なども用いられています。
約74cmの大幅のもの、約50cmの中幅のものなどがあり、長さは3.5~4m。色は紺や黒、茶などがほとんどです。生地が柔らかいのでウエスト周りの負担が少なく、長時間巻いていても苦にならないでしょう。
このようにカジュアルに着ることが多いため、冠婚葬祭や厳格な場所での使用はNGです。
兵児帯は結びやすさからバリエーションが豊富なのもメリットでしょう。そのため、アレンジをして着こなすことも簡単です。
初心者の方はもちろんのこと、雰囲気を変えたい方にもピッタリなので、いろんなバリエーションで楽しく着こなしましょう。
角帯を使った結び方3種類
角帯には3つの結び方があります。そのため、同じ角帯でも結び方によって印象が違います。もっとも一般的な結び方は、貝の口です。
パリッとしているので、清潔感があり着物にも浴衣にも合うでしょう。オールマイティな結び方なので、覚えておくと便利です。
その他、浪人流しと片ばさみが角帯の結び方になります。よく用いられるのは貝の口・浪人流しですが、それをもっとラフにしたのが片ばさみです。とてもシンプルで簡単なので、ぜひトライしてみてください。
結び方「貝の口」とは?
貝の口は、別名「男結び」といってもっともポピュラーな結び方になります。そのため、これさえ覚えていれば着物も浴衣も十分着こなすことができます。また結び方も女性着物の貝の口とほとんど同じですから、男性にも女性にも使える結び方といえるでしょう。
歴史も古く、江戸時代に商人や町人などが用いていました。結び方が単純なので覚えれば誰でも簡単に結ぶことができますが、その反面欠点が出やすいのも貝の口です。また、関東と関西でも結び方が異なります。
その理由は、天皇が京都御所を背にし、南に向かう(天子南面)・玉座に座り東方向の左手を上位と定めた、というところからきているため、関東と関西では帯前の柄が上下逆さになるのでしょう。
結び方全手順と注意点
まず、帯の端を半分に折ります。このとき、輪は下にし右手で持ちましょう。これを手先と呼び、手先はへそから30cm程度を残します。
次に左脇あたりで折った部分を広げるようにして巻きます。3周巻きますが、1周ごとに手先と垂れ先を締めるのがポイントです。
そして2周目または3周目で余った垂れ先は、ぐるっと内側に折り返します。このとき長さを調整しましょう。手先を下にし、垂れ先でくるむように締めたら手先を持ち上げ、垂れ先で手先をくるむように締めます。
同じような動作を繰り返すだけなので、コツさえ掴めば貝の口は簡単に結ぶことができます。
最後にお腹を引っ込め、時計回りにまわしたら完成です。位置は自分がしっくりくるところでかまいません。粋に見せたいなら結び目は中心から少しずらすと良いでしょう。
帯の幅によっては結びにくいことがありますが、貝の口はどちらかというと幅が狭いものがベストです。
ですから、半幅帯を使っている場合は結びにくく着崩れしてしまう恐れがあります。また基本的に腰骨あたりで締めるため、帯の高さには注意してください。
後ろにいくほど上向きになっているのがポイントです。完成したら一度横から確認してみましょう。
結び方「片ばさみ」とは?
角帯というと貝の口と浪人流しがポピュラーなので、片ばさみをされる方は少ないでしょう。簡単にいうと、浪人流しをさらに崩した結び方になります。結び目がないので食い込むことなくよりラクに帯を巻くことができます。
そのため、車を運転される方や椅子に座ることが多い方におすすめの結び方と言えます。また非常にラフな結び方なので、“着物や浴衣を着慣れている”という印象を与えるのではないでしょうか。
ただそのぶん初心者の方は崩れやすいのでおすすめできません。
あくまで貝の口や浪人流しなどは着慣れた方がサラッと結ぶ方法と言えるでしょう。もちろん覚えていて損はしませんので、よりラフに着たい方はぜひチャレンジしてみてください。
結び方全手順と注意点
最初に、帯の先端を半分に折りましょう。目安は30cmくらいです。先端を左わき腹に当て、2周・3周まわします。回数は自身のウエストサイズや帯のサイズに合わせて調整してください。
巻き終わり帯の先端が余っている場合は内側に折り返します。これは貝の口や浪人流しでも同様です。
また端が切りっぱなしになっているものや輪になっているものもそのままにしておくと不格好なので折り返してください。半分に折った先端を取り出したら、幅が広いほうの先端を上に乗せます。
両端を結んだら、幅が広い先端を巻いてある帯にくるっと巻き込んだら完成です。
帯の結び目は、後ろに移動させ、横から見たときに後ろが上がっているように調整しましょう。簡単な結び方ですが、意外にもしっかりしているので帯の種類を間違えなければ着崩れすることはありません。
注意点は、“胴をしっかり巻いておく”ことです。もともとラフな結び方ですから、ここでしっかり巻いておかなければ解けやすくなってしまいます。特に車に乗ることが多い方は、しっかり巻くことが重要になるでしょう。
簡単な結び方だからこそ、正しい方法でカチッと結んでください。それでも心配な方は、貝の口や浪人流しをおすすめします。
結び方「浪人流し」とは?
浪人流しは、片ばさみをもう少ししっかり結んだ方法になります。基本的に片ばさみと似ていますので、大きな違いはありません。浪人流しのメリットは、“簡単なのに着崩れしにくい”ことです。
時代劇で浪人が用いていたことからこの名が付けられました。浪人結びとも呼ばれています。
ラフなスタイルなので、お祭りのときや浴衣にも適しているでしょう。また、半纏や法被などとの相性も抜群です。基本的な結び方は貝の口と似ていますので、貝の口に慣れたら浪人流しでオシャレに着こなしてみてはいかがでしょうか。
少し崩したスタイルが女性受けするので、お祭りデートのときなどにも最適でしょう。
結び方全手順と注意点
帯の端は半分に折ります。輪を下にし、右手で持ちましょう。これを手先といい、手先は右脇から握りこぶし分を残して巻いていきます。このとき、左脇で広がるように巻くのがポイントです。
ここまでのやり方は貝の口と同様ですので、貝の口の結び方を覚えておくと簡単にできます。
次に、2~3周ぐるっとウエストに回したら、余った垂れ先を内側に折り返します。ウエストのサイズや帯の長さによって、3周以上巻くことになる場合もありますが、そのへんは自分で調整してください。
また垂れ先は手先より少し長めになるようにします。手先を下にし、垂れ先でくるむように締めましょう。
垂れ先は1周目と2周目の間に差し込みます。このとき、ギュッと締めることで崩れにくくなります。お腹を引っ込めて、結び目が後ろになるように回して完成です。ラフな結び方ですので、オシャレに巻きたい方は背中心から少しズレるようにすると良いでしょう。
注意点は、貝の口や片ばさみと同じです。基本的に崩れにくいスタイルですが、しっかり締めないと解けてしまうので気をつけてください。特に椅子に座ることが多い方はしっかり締めておきましょう。
兵児帯を使った結び方全手順と注意点
カジュアルな結び方として大人にも子供にもピッタリな「兵児帯」。角帯がパリッと着流すのに対し、兵児帯は普段着やくつろぎたいときに用いられています。そのため、冠婚葬祭やきちんとした席では使えません。
あくまで普段着として、着物より浴衣に適した結び方になります。また温泉の浴衣にもこの結び方がベストでしょう。
結ぶ前に「表と裏を確認する」「帯を四つ折りにする」など準備しておきます。折った帯の手先が、膝にくるように持ちます。これより長くなる場合は、帯の種類を変えるか余分に巻くようにします。
手先が下にくるように2周巻きましょう。このとき、手先は垂れ先の下になるようにしてください。
巻いた帯をまとめたら、下からくるんでちょうちょ結びにします。兵児帯はちょうちょ結びができれば簡単に結べるといわれていますので、一度ちょうちょ結びができるか確認しておくと良いでしょう。ちょうちょ結びにしたら、長いほうの先を隠すように下から通します。
形を整えたら、結び目をぐるっと後ろにし前の帯幅を整えて完成です。兵児帯は結び目にボリュームがあるので、場合によっては子供っぽくなってしまう可能性があります。ですから、大人が用いるときは帯の長さにも注意しましょう。
一度結ぶと崩れにくいので、まさに普段着やくつろぎたいときなどにピッタリの結び方といえます。
唯一気をつける点といえば、「お腹を引っ込めて結ぶこと」です。浪人流しや片ばさみも同じですが、お腹を引っ込めて結ばないと解けやすくなってしまうからです。
もともと兵児帯はラフな結び方ではありますが、手を抜くと不格好になってしまうので注意してください。
とはいえ、緩んでも元に戻しやすいのが兵児帯です。初心者でも取り入れやすいので、角帯ができない方はぜひチャレンジしてみてください。
帯の結び方はシーンに合わせていろんなアレンジができます。女性よりも着る機会が少ないと思いますが、今年は着物や浴衣を楽しんでみてはいかがでしょうか。
簡単に付けられる男性の帯・シーンに合わせて使い分け
男性の帯は、覚えると誰でも簡単に付けることができます。またシーンに合わせて使い分けられるのも魅力でしょう。たとえば、冠婚葬祭など第一礼装に合わせる場合は、角帯を使用します。
角帯にもいろんな種類がありますが、金や銀の絹糸を使用したものがおすすめです。
また略礼装や準礼装のときも角帯が基本になります。一方でカジュアルに着たいとき、普段着やお祭りなどは兵児帯を使用します。
角帯でも、素材が木綿のものや少し崩した浪人流しや片ばさみなどが用いられます。
もともと、男性の着物は「第一礼装」「略礼装」「外出着」の3つの格に分けられます。帯も格に合わせて使い分けることが大切です。
ただ着物を着るのではなく、TPOに合ったものを選ぶようにしましょう。
まとめ
着物というと女性のイメージが強いですが、男性の着物も魅力的です。また女性と違い簡単に着付けができるので、初心者でもしっかり着こなすことができます。また帯の結び方も、意外と簡単です。
角帯と兵児帯があるのはもうご存知だと思いますが、帯ひとつでスタイリッシュにもカジュアルにも見せることができます。結び方を覚えておくと、冠婚葬祭などきちんとした席でも役立つでしょう。
「着物はなかなか着る機会がない」という方も、浴衣なら夏のイベントでたくさん活躍します。着物初心者でも無理なく着ることができますし、帯の結び方が分からない方でも兵児帯を用いることでオシャレに見せることができます。
ただ帯結びには注意点もあります。
- 「腰に巻く」
- 「結び目は少し高い位置にする(横から見て後ろが高くなっているイメージ)」
- 「背中心から少しずらす」
- 「帯幅は10cm以下が理想」
などです。
どんなシーンで着用する場合でも、帯は必ず腰骨に巻きます。一見すると着崩しているように見えますが、腰骨に巻くのが正しい着方です。また少しずらすことで粋な感じに仕上げることができるでしょう。
今年の夏は、男性も着物や浴衣を楽しんでみてはいかがでしょうか。