着物について知っていく上では、着物を作り上げている糸についても学んでいく必要があります。着物に使用される糸は実に多彩で、生糸、紬糸、木綿、麻、正絹など種類は様々です。
どんな糸を使っているかで着物自体の格、価値が違いますし、また紬糸の原料である真綿はあくまでも絹であり、コットンとは全くの別物になります。
着物の価値を知るためには素材である糸から知っておかないと、それが本当に価値のあるものなのか、どれだけ素晴らしいものなのかを正しく理解することができませんから、この点についてはよく理解しておかなければなりません。
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目次
糸について知ることは必要不可欠な着物知識
糸について知っていれば、ある程度その価値をきちんと理解し、手入れや保存はもちろん手放す際にも正しい価値を持って売却、処分などしていけるようになります。
糸について知ることは着物について学んでいく上で必要不可欠な知識とも言えるので、心得ておいてください。
糸の違いについて知るとなると、なんとなく難しく感じる人もいるかもしれませんが、実際にはその種類というのはそれほど多くはありません。
基本的にその種類や違いは洋服と大きく変わりませんし、いくつかの糸のみ特定の作り方や原料で独特の呼び方がなされるだけなので、簡単に覚えることができます。
糸の原料について
着物の糸の原料は、天然繊維と合成繊維に分けられますが、日本の民族衣装としての着物においては天然繊維を原料に作られていることが前提となります。
ポリエステルやナイロンなどの合成繊維で作られたものはいわばイミテーションであり、着物としての価値を見出すことはできないので説明については割愛していきます。
着物に使われる糸の原料は天然繊維が基本であり、綿や麻などの植物性繊維と絹やウールといった動物性繊維に分けられます。
またこれらの原料は摂る植物や動物によっても分類されるため、突き詰めていくとその分類はとても細かくわかれます。
画像:全国の養蚕と絹織物 – 大日本蚕糸会
しかし基本的には木綿や麻、絹、ウールといった大まかな種類について理解していれば問題はありません。
動物繊維
着物に使用される動物繊維の糸は、絹やウールが代表的なものになります。
代表的なものは、羊毛(ウール)、カシミヤやぎのカシミヤ、アンゴラうさぎのアンゴラなど。
しかしウールを使用した着物というのは近年になってから数が増えてきたものなので、その歴史はまだまだ浅いと言えます。
絹を使用した着物は高級品であり、他の原料の糸を使った着物と比べても光沢や滑らかさが違います。
絹は養蚕で得る家蚕糸、自然の状態で育てられた蚕から得る柞蚕糸、これらを問わず捨てられるような繭や繭くずを紡績した絹紡糸などの種類があり、それぞれで光沢や色、強度などが異なるのが特徴です。
絹を贅沢に使った着物は大変高価で、100%絹の着物については正絹という表現をされます。
木綿や麻などと組み合わせて作られるものに比べて価値が10倍以上に跳ね上がることも珍しくありません。
植物繊維
着物に使われる植物繊維は、綿と麻が代表的です。木綿は様々なワタから、麻は苧麻などから作られることが多いです。
以下の動画は実際に苧麻から繊維を取り出しているものになります。
綿は機械で紡ぐ紡績糸と人の手で紡ぐ手紡ぎ綿糸に大別されます。紡績糸はスピーマ綿、ギザ綿、新疆綿などの長繊維を使用することが多いですが、安価な紡績糸では短繊維系の綿種を使用しています。
また手紡ぎ綿糸においては和綿を使用することが多いものの、短繊維で紡ぎにくいことから長繊維綿を使用することもあります。
麻は亜麻を原料としたものをリネン、苧麻を原料としたものをラミーと言います。いずれにおいても毛羽立ちが大きな繊維なので、糸として使用する場合は糊付けが必要です。
着物を作る糸の種類
糸には様々なものがありますが、実際に着物を作るために使用されることが多いのは以下4つです。
木綿や麻などは日常的に着用するような着物に使われることが多く、絹や毛などは礼装として着用する着物に使用されることが多いです。
同じ原材料でも紡ぎ方によって呼び名が変わり、特に絹を原料としたものについてはこの点についてよく理解しておく必要があります。
同じ絹でも見た目の印象が全く異なり、素人の感覚では木綿や麻などと勘違いして扱ってしまう恐れもあるので気をつけなければなりません。
呼び方による糸の特徴を知っておけばより賢く着物を扱っていけるようになりますから、どのような違いがあるのかをよく学んでいってください。
絹糸は2種類ある
着物を作る糸の中でも最も高価な絹糸ですが、これは生糸と紬糸の2種類があります。同じ生糸でも2つの糸の光沢や風合いは大きく異なり、全く逆の印象を感じるほどの違いがあります。
着物について知識が無い人の場合、絹糸の見極めが出来ず、本来価値あるものを雑に扱ったり、価値を甘く見て無駄に処分してしまうといったことがよくあります。
絹糸について理解しているだけでも価値ある着物を無駄にしてしまうリスクはぐっと減らせるので、この点はよく理解をしておきましょう。
生糸と紬糸は大まかに言えば、原料は同じながらも作り方に違いがあります。
どのように糸を紡ぐかが2つの最大の違いなので、このポイントを押さえ、絹糸について知識を深めていってください。
生糸(きいと)
生糸は蚕が吐き出す糸で作られた繭から繰り出された糸から作られた糸です。
毛糸と同じように繭を解いて細い糸を繰り出し、それを依りあわせて織物に使える太さの糸に仕上げていきます。
絹製品と言えば光沢のある印象がやはり強いですが、あの艶のある美しさは生糸だからこそ生み出される質感です。
ツヤツヤとした光沢の絹製品は生糸で作られているものが大半なので、このように覚えておくと良いでしょう。
また極めて細い糸を丁寧に繰り出し依りあわせた生糸は、見た目の美しさと共にやわらかいという特徴があります。
生糸を使った着物
生糸を使った織物は柔らかく滑らかな手触りで、着物においてもとても着心地に優れます。生糸は蚕の幼虫が複数であったり繭玉の形がいびつであったりすると作り出すことができません。
幼虫が1匹の蚕の繭からひいたものだけを生糸と言い、そのためこの糸は絹糸の中でも貴重で、その価値もとても高価です。
生糸は際立った白い光沢が特徴ですが、これは幼虫の餌である桑の葉が理由です。蚕は餌になる葉の種類によって繭の色が異なり、白ばかりでは無く黄や緑など様々な色があります。
しかし色については染めでより多彩な色をつけることができるため、生糸も白が一般的です。
紬糸(つむぎいと)
紬糸は、生糸をとるには不向きな繭から作られる真綿を原料にして紡がれる糸のことです。
生糸が蚕の吐き出す細い糸を丁寧に解いて取り出されたものに対し、紬糸は一本の糸を依り合わせるのでは無く絡まった短い糸を切れることなく引き出して作られます。
生糸で作られる着物が滑らかで光沢があるのに対し、紬糸で作られる着物は素朴な風合いが特徴です。
見た目には綿や麻を素材とした着物に似ていますが、絹であることには変わりが無くその上質さは一目でわかります。
紬糸は引き延ばされ方で2種類に分けられ、丸く引き伸ばされたものを袋真綿、四隅を取って四角く引き伸ばされたものを角真綿と言います。
それぞれの状態に引き延ばされてから糸を取り出していきますが、着物で言うと袋真綿から作られる糸の方が上質とされています。
真綿を作り上げる繭は本来捨ててしまうような毛羽のような繊維ですが、これを糸として利用することを推進している産地も多く、結城紬などが有名です。
また生糸として使えない捨ててしまうような繊維とはいえ絹には変わりがありませんから、紬糸ももちろん高級品であり、着物は数十万円といった価格で取引されます。
紬糸は真綿を原料にしている真綿とは何?
紬糸の原料となる真綿ですが、これはコットンでは無く、あくまでも絹の一種です。
生糸を取り出す繭と全く同じ原料ですが、生糸にするには不向きな毛羽立った細い繊維から作られるため、これを集めて煮て一塊の綿のようにまとめることから、真綿と呼ばれます。
真綿と聞くとどうしてもコットンの方の綿を思い浮かべてしまいますが、木綿と真綿はコットンとシルクという全く別のもなので、この点を勘違いしないよう気をつけなければなりません。
煮て一塊にされた真綿は、袋状に引き伸ばされる袋真綿と四角く一枚に引き伸ばされる角真綿のどちらかの形にされ、そこから糸を紡いでいくことになります。
真綿を引き延ばすと「袋真綿」「角真綿」に分類
(画像出典:http://mawata.or.jp/world/howtomake/package)
生糸を作るには不向きな繭は、一まとめに煮られて真綿となりますが、この塊の状態の真綿をどのように引き延ばすかでさらに以下の2つに分類されます。
- 両手を差し入れ袋状に引き延ばしたものを「袋真綿」
- 四隅を取って1枚に引き延ばしたものを「角真綿」
着物においては袋真綿から作られるものが上質とされます。
生糸に不向きな繭と言えど真綿は絹には変わりありませんし、また袋真綿、角真綿いずれにおいてもこれを作るには熟練の技が必要となります。
そのため生糸同様真綿から作られる紬糸も高級品であることには変わりなく、着物は高級品として扱われます。中にはその素朴さから、生糸よりも紬糸を好む人も少なくありません。
紬と紡ぐの違いについて
糸の用語の「つむぐ」という言葉には、「紬」と「紡ぐ」の2つの表現があります。
これはきちんと表現される漢字ごとに意味が異なり、「紡ぐ」は短い1本の繊維をよりあわせて糸を作る場合に使われる表現です。
絹であっても毛羽や短く切断したものを糸にする際は「紡ぐ」と表され、つまりはよりをかけて作られた糸のことを指します。
紬の意味
一方「紬」は、よりあわせたりつなぐこと無く、引き出されて作られた糸のことを指します。
真綿などから切れることなく引き出された糸を表すもので、つまりは字の通り紬糸のことを言います。
“つむぐ”という言葉から一番初めに思い浮かべる漢字は“紡ぐ”ではないでしょうか。この文字は毛・綿など一本の繊維の短いものを撚り合わせて糸を作る場合に使います。絹であっても繭毛羽(蚕が繭を作る最初の足掛かりとして吐く生糸より細い繊維。繭のまわりに毛羽のようにまとわりついている繊維です。本来捨ててしまうものなのですが、糸にして利用することを推進している産地もあります。)や短く切断したものを糸にする場合はこの文字です。
(中略)
“紬ぐ”は撚り合わせるのでもなく、つなぐのでもなく、引き出して糸を作る場合の文字です。つまり、真綿から切れることなく糸を引き出したものを紬糸といいます。
紬と紡ぐの違いについては、紬の意味を理解しておくと違いを覚えやすいです。
切れることなく引き出された糸が紬糸と覚えておけば、自然と「紡ぐ」についてはより合わせて作られた糸と覚えられます。
それぞれの糸は作られ方だけでは無く光沢や質感などにも違いがあり、紡がれた糸の方がツヤがあり柔らかく、紬糸の方は素朴でしっかりした味わいがあります。
同じ絹でも糸の種類で全く違う風合いを楽しめるので、「紡ぐ」と「紬」の違いについて理解しておくとより賢く自分好みの着物選びを行っていくことができるでしょう。
木綿(コットン)とは?
木綿はワタから作り出される植物性繊維の糸で、通気性、速乾性に優れているのが特徴です。軽やかな手触りで涼しげな生地を作り上げられることから、夏着物にはぴったりの糸と言えます。
またカジュアルな印象が強いことから、日常用の着物にも適しており、最初の着物として選ばれることも多いです。絹に比べると価格も安価で、その価格は10分の1程度まで落ちます。
1万円台で買えるものも多く、手頃な着物を選びたいというのであれば、木綿糸を使ったものを選ぶのが良いでしょう。
ワタの種類
木綿の原料となるワタは繊維の塊なので、繭と同じように紡いで糸を作ります。
ワタには色々なものがありますが、有名なのは以下の海外の海島綿で、これらは長繊維綿であることから機械紡績で糸を紡がれます。
- アメリカのスピーマ綿
- エジプトのギザ綿
- 中国の新疆ウイグル自治区の新疆綿
国産の和綿は短繊維で紡ぎにくいといった特徴があるため、昔ながらの手法で手で紡がれることがほとんどです。
また長繊維であっても手紡ぎで糸を作り出すことはあるので、繊維の長さで紡ぎ方が決まっているということではありません。
機械で紡がれた糸は紡績糸、手で紡がれた糸は手紡ぎ糸と呼ばれ、木綿糸はこの2種類に大別されます。
麻とは?
麻糸は、苧麻や亜麻などの葉や茎、皮などから作られます。綿と同じ植物繊維で、速乾性や吸水性に優れているのが特徴です。
繭やワタのように繊維が一塊になっているわけでは無いため、麻糸を作り出す際には葉や茎、皮をほぐしたり割いたりして繊維状にし、これを結んだりよったりして長い糸を作り出していきます。
このような糸の作り方は麻独特のもので、このような方法を「績む」と言います。
麻は糊付け処理の必要がある
一般に売られている麻は苧麻、亜麻を原料としたもので、亜麻から作られたものをリネン、苧麻から作られたものをラミーと言います。
これらはそれぞれの植物の皮を加工して績んで作られたものです。麻糸は大きく毛羽立った繊維であるため、糊付け処理でこれを落ち着ける必要があります。
そのため初めて手にする麻糸や麻の着物というのは糊付け独特の硬さがあり、洗いを繰り返してこれを取り除いていくことになります。
繰り返し着用、洗いをかけることで糊が取れ麻そのものの風合いが出てくるため、麻の着物を手にする際は、着て素材の良さを出していくということをよく理解しておくことが必要です。
ウールとは?
ウールは羊の毛から作り出される糸です。動物性繊維で非常に温かく、冬の着物や道中着に用いられます。
優れた保温性を誇る一方で虫に食われやすいといったデメリットがあり、保管については防虫剤を欠かすことができません。
また洗いをかけることで縮みが起きやすく、着物という扱いの難しいアイテムでもあることから綿糸や麻糸の着物のように自分で洗濯をするのは難しくなります。ウール糸には様々な種類があります。
- 繊維の長い毛を一定の方向に揃えてよった梳毛糸
- 短繊維の毛を紡績した紡毛糸
- 偏りで太細のあるスラブ
- 等間隔の輪状にたるませ絡ませてよったスラブ
- 形状に変化をつけたリング
- 細糸にさらにウールをよりあわせ変化をつけたブクレー
それぞれで光沢や強さ、温かさなどに違いが出てきます。
着物を作る場合には良質で光沢があり強さも備えた梳毛糸を使うことがほとんどで、ループやブクレーのような表面に凹凸が現れるような糸を使用することはほとんどありません。
ただ伝統的な着物においては梳毛糸を使うのが一般的というだけで、ファッション性やデザイン性を意識した着物においてはこれ以外の糸を利用することもたびたびあります。
正絹とは?
糸についてチェックしながら着物を物色していると正絹という言葉を目にすることがしばしばありますが、これは糸そのものを指すのでは無く、織物を指す言葉です。
言葉の通り、100%絹糸で作られた織物のことを正絹と言い、木綿や麻の糸などを混ぜることなく正真正銘絹だけで作られていることを表します。
正絹の着物は数ある着物の中でも最高級品であり、見た目や質感も格段に上質です。
保温性や通気性に優れ着心地も軽やかといった特徴がありますが、一方で非常に繊細な材質であることから洗いによる縮みや型崩れ、虫食いなど手入れや管理には充分気をつけていかなければなりません。
同じ正絹でも生糸、紬糸のどちらを使っているかで着物の質感は変わってくるので、この点については理解しておく必要があります。
100%絹というと滑らかで美しい光沢のある生地というイメージを思い浮かべてしまいますが、紬糸を使っている場合は100%絹でも素朴な風合いとなりますから、思い込みで勘違いをしてしまうことの無いようにしてください。
「績む」と「紡ぐ」の違いとは?
「績む」と「紡ぐ」はどちらもよって作る糸に使われる言葉ですが、「紡ぐ」は綿などから繊維を引っ張り出してそれを細長い糸にしていくこと、「績む」は繊維をしめらせながらよって繋いでいくことを指します。
“績ぐ”これも“つむぐ”です。“うむ”と読む場合の方が多いかもしれません。麻や芭蕉、樹皮繊維など手を広げたくらいの長さの繊維をつないで糸にする場合はこの文字を使います。
植物繊維で言えば「紡ぐ」は綿糸、「績む」は麻糸で使われる表現です。
綿糸の原料となるワタは細く柔らかな繊維が一塊になったものなので単純にこれを解き糸をよりあわせていくことができます。
しかし、一方の麻は葉や茎、皮など硬さのあるものを叩いたり割いたりして柔らかな繊維にしていくことから始めていかなければなりません。
「紡ぐ」も「績む」もよって長い糸を作り上げていくということに違いはありませんが、よりあげていく手前の段階、原料となる繊維にかける手間において違いがあるので、この点をよく理解しておくと良いでしょう。
糸を作る過程の違いを表すものなので、それ以上に特に意味は無く、「紡ぐ」か「績む」かで糸の特徴が変わるということはありません。
綿やウールは紡いで作られるもので績むことはありませんし、麻もまた績んで作られてもこれを紡ぐということは無いのです。
材料が何かという時点で、「紡ぐ」のか、「績む」のかということはすでに決まっているということです。
糸の単位について
着物について知っていくためには、糸の単位についても理解しておくことが必要です。
着物は材料の他、使用されている糸の太さでも質に違いが出てくるので、単位について覚えておくとより賢く価値を見極めていけるようになります。
糸の単位は独特であり、日常で身につく知識でも無いことから、きちんと学び理解しておけるようにしましょう。
番手(ばんて)
糸の太さを表す数字を、番手と言います。それぞれの繊維ごとに表し方や計算式は異なるので、これについては糸の種類ごとに覚えておく必要があります。
またこの数字は機械紡績の糸について用いられるもので、手紡ぎの糸には適用されないということも覚えておきましょう。
また同じ番手でも定重式、定長式、テックスなどいくつかの種類があり、定重式では数字が大きくなるほど糸が細くなる、定長式では数が大きくなるほど糸が太くなるなど大きく違いが出てきます。
定重式は紡績糸、定長式は絹、テックスは全ての糸に使えるよう採用されている番手ですから、こういった点についても理解しておき、臨機応変に使ってそれぞれの糸を比較していけるようにしましょう。
綿
綿糸の太さについては20/1、20/2といったように表し、前の数字が番手、後ろの数字が糸をより合わせた本数になります。
20/1であれば20番手の糸1本のより糸、20/2なら20番手の糸2本をより合わせて作られているということです。
ちなみに1本のみのより糸を単糸、2本よりあわせた糸は双糸と言います。
綿の数量単位は英国式が基本となっており、1ポンドに10綛ある糸は10番手となります。
10番手の半分の太さの20番手の糸は1ポンド20綛あることになるため、20/1を2本より合わせた20/2と10番手の単糸は同じ太さです。
糸の種類は呼び方は異なるものの、平均的な呼び方として1綛<1捻<1玉(綿)または1括(絹)となるので、これも覚えておくと良いでしょう。
綿糸の重さと計算式
綿糸は1ポンド約450g、840ヤード約750mなので、1番手の計算式は450gある糸の長さ÷750mになります。
番手から1g当たりの長さを知りたい時に、この計算式を用います。
例として30/2の綿糸1gあたりの長さを求めたい場合には、30/2=15/1とそれぞれの糸の重さは同じなので、30/2=15と考えていきます。
- 30/2=450gある糸の長さ÷750m
- 15=450x÷750
- 450x=15×750m
- x=25m
- 1g=25m
このように答えを導いていくことが可能です。
綿糸はこのようにして必要な数字を導いていくことができますが、綿糸でも網糸、ガラス紡、スラブ糸にはこれが適用されません。
麻
麻の番手は、綿糸と同じ表示になります。100gあたりの長さは問屋の価格表を参考にしたり、綛の枠周を測り必要使用量を算出します。
計算は1番手につき1ポンド=約450g、300ヤード=約274mなので、番手=450gの糸の長さ÷274mの式に当てはめて計算していくことになります。
綿糸と同じ表示ではありますが、麻は毛羽立った繊維であるぶん太く重いので、綿糸が1gで1.69mあれば1番手になるのに対し、麻糸は1gで0.6mで1番手となります。
同じ表示でも繊維の特徴で1gあたりの長さは変わってきますから、こういった点については別途理解しておく必要があります。
ウール
ウールは羊毛のことですが、計算の際には純粋な羊毛の他、混毛についても同じものとして扱われます。
綿や麻とは違いウールの番手は前の数字がよりあわせた本数、後ろの数字が番手を表すので、この点の違いについてはよく覚えておきましょう。
ウールの計算式は番手そのもので表され、1/1なら1g=1mと読みます。つまり1/10なら1g=10m、2/30なら2gで30mということなので、これも1g=10mと言うことになります。
単純に割り算をして1gあたりの長さを計算できるため、他の種類の糸と比べても最も計算しやすい便利な番手と言えるでしょう。
絹
生糸の太さはdという表記でデニールと読み、110d(110デニール)のように表します。
また110中などといった表示をすることもありますが、これは平均して110dという意味で、d×より本数=番手となるため、110中2と言う場合には110dの絹糸を2本より合わせているということになり、110×2で220dということになります。
絹は生糸の場合1d=1g=9000mと考えることができますが、実際には絹糸は種類が多く多様なため、dから一括りに長さを求めることには煩雑さや無理があるとも言えるでしょう。
枠周や上げ数から長さを割り出したり、ウールと同様の番手で表す糸もあるため、そちらの方が使いやすいのが現実です。
まとめ
着物を作る糸の種類は絹、綿、麻、ウールと、基本的に洋服と変わりありません。それぞれの原材料ごとの特徴も同じですから、糸を知ることである程度の着物の価値を判断することができます。
しかし絹については生糸、紬糸といった種類があり、2つの糸から生み出される着物の印象は、艶のある華やかなものと落ち着いた素朴なものという全く正反対のものになります。
いずれも上質なものであることに違いはありませんが、特に紬糸についてはその特徴をよく理解していないと、これを絹と思わず綿や麻と間違えてしまうこともありますから、気をつけましょう。
着物の基本を知るためには素材である糸から知識を深めていくことが不可欠であり、これを知っているだけでも着物をある程度の価値で分類していくことができるようになります。
染めや織りなどでも価値は変わってきますが、素材である糸は着物と付き合っていく上でキホンのキとなるものですから、しっかりこの種類や特徴を覚えておくようにしてください。